ゴミの散らかり方の分析をもう少し続けます。
吸い殻拾いを始めてから、私、非常に気になっていることがあります。メンソールタバコの吸い殻や空き箱の割合が異常に多いということです。もしかしてニコチンかタールとメンソールが組み合わされると、人間の倫理感を破壊する化学物質が生成されるのかとか思いつきましたが、まあ嫌みはそれくらいにしておいてですね。
更にじっくりと観察してみると、狭い範囲で、しかも短い時間に同じ銘柄のメンソールタバコの吸い殻が一気に捨てられていることがわかります。何故そんなことが分かるのかって? 吸い殻というのも捨てられてから時間経過とともに風化していきますからね。端的に言えば外装の紙の色が変わってくるわけです。
さて、上記のような散乱パターンが発生するのは、具体的にはどういった状況なのでしょうか? 散乱している場所も考慮すると、これも簡単に分かります。長時間、同じ場所にたむろしてタバコを何本も吸っているのです。では、それはどんな場所なのか。
2種類。こうした吸い殻の散らかり方が観察出来る場所は2種類だけです。
A:大きな公園の中
B:コンビニエンスストアが見える場所
加えて、こうした場所には吸い殻の他にも菓子の包装やファストフードの包装、炭酸飲料のペットボトルなどが大量に落ちています。要するに、暇を持てあました子供たちが夕方から夜にかけて、こうした場所で時間を潰しているんですね。特にある公園のベンチなどは、中学生の溜まり場になってますからね。中学生がタバコ吸って発泡酒呑んで、夏には木陰で性交もしているようです。何やってんだお前ら。
しかしながら、これは苦笑して済ますことが出来る状況ではありません。というのも、例えば公園を掃除する回数を増やすとか、あるいは公園を夜間立ち入り禁止にするとかいった小手先の対策では、何の問題解決にもならないからです。公園がダメならどこか他の場所に移動して同じことをするだけでしょうからね。
さて、今現在、公園やコンビニの周りを汚しているティーンエイジャーたちの個々の家庭状況はもちろんわかりませんけれども、夜な夜な公園でジャンクフードとタバコと酒で時間を潰している子供の家庭というのは、これは申し訳無いですけれども、正常な状態では無いでしょう。少なくとも子供がそういう生活にあることを許容する大人を、現在の日本社会は正常とは見なさない。
では、何故そのような家庭が存在するのか? 断言は出来ませんけれども、背景には所得格差の問題が大きく横たわっているはずです。単位時間あたりの収入が低ければ、子供の世話をする時間を削ってでも賃労働をしなければいけない。結果、そうして十分なケアを受けなかった子供の一部は(全てではないですよ念のため)、きちんとした生活習慣や教科学力を獲得出来ず、将来の選択肢が大いに狭まる・・・・ストレートに言えば、低学歴や犯罪歴を背負い込むことで、低賃金の職しか選択出来ない可能性が激増する。
貧困の再生産です。そして街は汚れ、治安は悪化し、公園の器物損壊が多発する。
最も根本的な解決策は、富の再配分のやり方を手直しすることです。小泉政権下で進んだ労働条件破壊を改める。低所得層への就学支援(高校・大学の学費免除)を拡大する。教員数の定員を一気に増やす。
こうした根治策が最も重要であることは疑い無いですが、それとは別に緊急的な対策として、行き場を無くした子供たちの居場所を作る作業も必要なのだと思います。おそらくハワイでは航海カヌーはこうした緊急対策のソリューションの一つとしても用いられている。
ですが、これはなかなか簡単じゃない話ですよ。例えば、そうですね、パドリング競技のクラブを作ってフラフラしている子供たちの受け皿にするというソリューションを考えてみましょう。そういえばナイノア氏も高校をドロップアウトしてフラフラしていた頃、デューク・カハナモク設立のパドリング競技クラブ「フイ・ナル」に入ってホクレアに出会った。おー、いーじゃないですか。
しかしだ。あの、公園にたむろしてタバコ吹かしてゴミを散らかして物を壊しているだけの連中と信頼関係を築いて、クラブ活動の場まで連れて行くのは、多分生半可な作業じゃないです。かといって、無理矢理海に連れて行って沖から水中に叩き込むというような暴挙はいけません。何しろ日本には海洋レクリエーション史にどす黒く輝く汚点、戸塚ヨットスクールがありますからね。ドロップアウトした子供を海でしごきにしごいて殺しちゃったヨットスクールですよ。
かように考えてみると、実はパドリング競技でもセイリングでも、あるいは他の何の活動でもそうだと思いますが、そういった活動へのアクセスの点で既に世帯間の格差があるのではないかと感じます。つまり、最もそういったソリューションを必要としている子供たちは経済的・家庭的な事情で、それらのソリューションへのアクセスが制限されている。せいぜい自転車か原チャリを乗り回して、深夜にスプレー塗料で他人の家の壁に落書きをするのが関の山。一方で、それなりに手間暇をかけて育てられている子供たちは、教科学習以外にも多様な活動へのアクセスが可能となっている。
この状況を何とかしようと思ったら、じっくりと腰を据えて地域のドロップアウト予備軍たちと関わり、信頼関係を築いていける組織が必要です。信頼関係を築き、将来の選択肢を大きく制限するような選択をしないように継続的に働きかけていかなければなりません。が、これは子育て中のパパが息子の散歩のついでに出来る仕事の範囲を大きく超えています。PTAとかNPOとか、ともかく地域社会と密接な連携を取れる組織でなければ効果的な活動は出来ないでしょう。
どうやら、コンビニ周辺と公園の吸い殻撲滅の道のりは遠いようです・・・。まあ、少しずつやっていくしかないですが。