のらぼう

 うちの近所のスーパーには、地元の野菜を並べたコーナーがあります。市内の農家が直接品を入れているようで、午前中に収穫したものが午後には並んでいるという、なかなか見所があるコーナーです。

 そのコーナーに、今日から「のらぼう」が並び始めました。

 「のらぼう」って何よという方が殆どだと思いますが、これは私の住んでいる地方の伝統野菜で、相当に昔から栽培されているらしいです。

 要はホウレンソウや小松菜、チンゲン菜なんかと同じアブラナ科の菜っ葉なんですが、これがなかなか旨い。甘みと苦みと歯ごたえが絶妙にブレンドされていてね。今日は挽き肉と一緒に八丁味噌でさっと炒めたんですが、もうね、ビールなんかに最高に合いますね。この歯ごたえや風味を楽しむのであれば、さっと火を通す料理法が向いています。

 この「のらぼう」、ちょっと遺伝子に特徴があって近親種と交雑しにくかったらしく、また栽培が馬鹿みたいに簡単だということもあって、滅びずに今まで残ってきたのだそうです。かつては救荒野菜としても活躍したんだとか。

 私は別の土地で生まれ育ってこの土地に移ってきたので、「のらぼう」を知ったのは割と最近でした。でも、今は好きですね、「のらぼう」。なんかこういうものを食べると、自分が自分の住んでいる土地と繋がっているという実感があります。これは比喩でもなんでもなく、「のらぼう」はこの土地から分子を集めて育ち、私はその「のらぼう」を食べることで、「のらぼう」経由でこの土地の分子を自分の体に取り込んでいる。

 そう考えると、自分の住んでいる土地を汚したり痛めつけたりということが出来なくなります。だって自分の体を汚したり痛めつけるのと同じだもんね。

 航海カヌー文化復興運動に学び、実践するってのは、こういうごくごく簡単なところから始めていけば良いと私は思っています。地物を食う。地物を育ててくれる土地や海を、自分の体のように大切にする。そういう簡単な心がけの先に、健康な未来があります。たぶん。遠くから食い物を運んでこないで済むぶん、二酸化炭素も出さなくて済むしね。

 地物は美味しいよ。