放射性物質の種類と性質の確認

 「六カ所村の再処理施設から放出された放射能は三陸の海を汚染する。もう三陸の海産物は食べられなくなるし、サーフィンもシーカヤックも出来なくなる」という指摘も見過ごすわけにはいきません。

 それは本当なのか。

 で、調べてみました。

 再処理施設が放出する放射性物質はクリプトン85、トリチウム、炭素14、ヨウ素129、ヨウ素131ですけれども、このうち半減期が非常に長いのは炭素14とヨウ素129で、後は10年とか13年、8日など割と短めです。いずれの放射性物質もβ崩壊(β線という放射線を出す)ですが、そのβ線というのは物質を通り抜ける力が弱く、人間の皮膚も越えられないそうです。ですから、危険なのは内部被爆、つまり体内に放射性物質が入る場合のみということになります。

 さて、上記の放射性物質の中で生物濃縮がかかるのはヨウ素129のみ。つまり、他の放射性物質は体内に入ってもじきに出ていってしまうと。ヨウ素129が蓄積された魚介類や海草類を沢山食べると、たしかに危険です。

 では、どれだけ三陸沖の魚介類を食べたら、危険なのか?

 これについては、こちらのウェブログの記事が(私から見て)客観的な計算をしておられます。

ぷろどおむ えあらいん 続・デマその1:再処理工場廃液の生体濃縮について

 う~む。食べて食べて食べまくらねば、再処理施設由来の放射性物質で体調を崩すのは難しそうですね。川田議員の質問への答弁を信じるならば、農水省は海産物の線量モニタリングを行うそうですし、原燃も魚や貝の線量モニタリングをしています。異常(事前の計算値を大きく超えるような放射線量)があればすぐに施設と流通にストップがかかるんじゃないかとも思います。

 なお、参考までに、この再処理施設が本格稼働することによる施設周辺での人体の被爆量増加は年間0.022ミリシーベルト(原燃計算値)で、反対派の方々はこれよりもっと多いはずだが、原燃は意図的にこれを少なく見積もっていると主張しておられます。その主張の是非は、今のところそれぞれが自分のところで出している刊行物に論文やアジ文を掲載しているだけなので、私には科学的な根拠に基づく評価が出来ません。アカデミック・ライティングの作法に則っているかどうかで言えば、グリーンピースもストップロッカショも原子力資料室も美浜の会も99%落第だとは思いますが。

 出来れば中立な査読付き学会誌に論文を投稿しあう形でやっていただけると、査読を通るかどうかが目安になりますから、他分野の者でも評価しやすくなるので嬉しいですね。NatureとかScienceなんて世界最高権威の総合科学誌は、投稿に会員資格も必要無いわけですし。

 なお、この0.022ミリシーベルトという数字がどの程度のものなのかというと・・・

飛行機で日本と欧州を1往復 0.07ミリシーベルト
胸や歯のレントゲン検査1回 0.3ミリシーベルト
バリウムを飲んで胃のレントゲン検査1回 4ミリシーベルト

 バリウムは私も4月に飲みましたよ。胃ガンの早期発見の為に4ミリシーベルトも被爆してしまったとは痛恨の極み。原発1年分の放射性物質を1日で出す六ヶ所村再処理施設の1年分の、更に182倍であります。やばい、やばいよ。

 最後に、面白いものを見つけたので紹介。

「ラジウムボール」
http://www.sakaesyouji.co.jp/radium/radium.htm
ご家庭のお風呂に入れるとラドン温泉になるという触れ込みの商品で、「毎日30分ラジウム温泉に入浴したとして計算しますと年間で0.023ミリシーベルト。法律により人為的に受ける放射線量の安全基準は1ミリシーベルト以下ですから、毎日安心してご入浴いただけます。」

 これは危険だ・・・・買っちゃおうかな。