以前に紹介しました、土方久功(ひさかつ)さんのサタワル島滞在ですけれども、土方さんが書き残したフィールドノートは現在「土方久功著作集」として刊行されています。全8巻のうち4巻、5巻、7巻、8巻がサタワル島関連です。それぞれ5800円と高価なので、図書館で探してみてください。
4巻 サテワヌ島の神と社会
5巻 サテワヌ島の民話
7巻 「流木―孤島に生きて」
8巻 サテワヌ島日記・ノート
このうち4巻には「サテワヌ島における漁法」「サテワヌ島における航海術伝授」という論文が収録されています。後者は3ページほどの研究ノートといったほうが良いものですが、一つ貴重な記述があります。
これまで、サタワルの航法師の階位については良く分からないことがありました。すなわち、航法師としての階位と、航法師になるための儀式の名称の問題です。以下、表にしてみましょう。
1:Steve Thomas,” The Last Navigator”における記述
航法師の称号 Palu 儀式の名称 Pwo
2:エリック・メッツガー博士がラモトレック(サタワルと密接な関係にある島)で行った研究における名称
航法師の称号 Paliuw 儀式の名称 Pwo
3:ユネスコのCDロム「 The canoe is the people」における記述
航法師の称号(最初の階位として) Pwo 儀式の名称 Pwo
このように、航法師の称号と儀式の名称を同じとする報告と、違うという報告が併存しています。そこで土方さんの記述を見ると、「ポ」という語が「航海術秘儀」「航海術秘儀伝承者」「航海術秘儀伝承儀式」の三つの意味を持っているとされています。
土方さんの記述は、Pwo以外にPaliuw/Paluという語があるのかないのかという問題に関しては、「ない」という立場のものですが、それ以外に、航海術の中身そのものもPwoと呼ばれる(呼ばれていた)という可能性を示唆しています。
だからなんなんだというと、話はここで終わるのですが。