裏ビデオを見てしまいました

 拓海広志さんがわざわざDVDに焼いて送ってくださった裏ビデオを見ました。内容は1994年のムソウマルの航海。故ベルナルド・ガアヤン酋長が拓海広志さんの「アルバトロス・クラブ」やマウ・ピアイルック師の協力を得て実施した、あのヤップ・パラオ間石貨航海です。

 実はこの航海、某テレビ局が取材に入っておりまして、全部で20分ほどの特集として放送される予定だったのですね。ところが放送の当日に政変が勃発してお蔵入りになってしまったという、悲運の特集です。

 内容は、カヌーに使われる木(マホガニーの一種でした)が切り倒される所から始まって、カヌー建造、航海、石貨製作、帰りの航海という流れ。故ガアヤン酋長は達者な日本語でインタビューに答えておられましたし、当時62歳のマウ師はまだまだ第一線の航法師としての勇姿を披露しておられます。もちろん20分という長い特集ですから、スター・コンパスや、マウ師が常に感じているという五つの海洋波(うねり)についての説明もあり。航行中の航海カヌーの船上から高感度カメラで、船首のV字型の照準器が捉えた星を写した映像など、おおおおおという声を上げてしまいました。

 また、ガアヤン酋長の言葉もとても深みのあるものばかりで、さすがに賢人と讃えられた方だけのことはあるなと。「船大工としての修行を積めば、カヌーの魂が宿っている木がわかるよ。」という言葉が良いですね。

 残念だったのは、せっかくの画期的な航海の意義が、若者たちには殆ど理解されなかったという話。色々な風聞から推測する限りでは、現在のヤップは航海カヌー文化が底付いてしまった時期なのだろう、としか考えられないですね。もちろん底付いたということは、これからリバウンドしていくということでもある。セサリオさんたちがヤップで始めた航海術学校が無事に軌道に乗ることを、まずは祈りましょう。

 それにしてもこのビデオ、なんとか色々な方に見ていただきたい貴重な内容のものです。以前にご紹介した「アルバトロス・クラブ」会報と併せて、来年のホクレアの来航をきっかけとして、何か良い方向に話が転がって欲しいです。こんな貴重なものが埋もれてしまうのはあまりにもったいない。