おはようございます。
『竜が居ない国』、主人公パーティーはいよいよ最終決戦の地、マハラビエ市へと向かうことになります。
主人公ソルが先へ進む決断をする下りは、ファンタジー小説(や企業小説)ではあまり見られない思考の展開になっているような気がしますが、いかがでしょうか。
ソルは3人の部下の立場と給料額を始終、気にしています。
参謀長ポジションである傭兵イェビ=ジェミはこの時点で既に天下に名声の轟く武人で、お金には困っていませんから、大事なのは彼の名誉が守られるか、名声が高まるかどうか。
その弟子であるファイスはこれから売出し予定の若手なので、やはり大事なのは実績です。
一方、途中からくっついてきたリムは薄給の雑用係。
食費・滞在費は雇用主持ちで5日で銀貨3枚というのは、今の日本の貨幣価値ですと、「寮・食事付きで週に3万円」です。週休2日でもないので、おそらくリムは7日間あたり72時間くらいは稼働しています。だから時給換算だと416円。しかも雇用期間は3ヶ月。
ソルは面倒見が良い人なので、生理休暇も有給で取得させていますし、リムの次の仕事も見つけてやるつもりでしょうし、労災があれば全部自分持ちで治療させるでしょう。
でも時給416円です。
そんな部下を、もはや戦闘行為に巻き込まれることは避けがたい最終決戦の地まで連れて行くのか。
しかも、コンサルタントとして請け負った案件に関しては既に100点の成果を出している。
合理的に考えたら、進む理由などありません。さっさと首都に引き返して残りの給料を受け取って、リムに次の勤め先を紹介して、妻子のもとに帰るべきです。
でも彼は進む決断をしている。
同じフリーランスのコンサルタントとしての私の見解では、彼の選択は間違っているんです。部下を無駄に危険な目に遭わせている。ビジネスパーソンとしては、失格とまでは言いませんが、褒められた判断でもない。
ソルもそれは重々承知なんです。彼も自分はバカなことをしていると思っている。それでも進むという覚悟ですね。
皆様はどう評価されますか?