毎日新聞の読書感想文コンペは課題設定からしておかしい

読書感想文Q&Aより

Q:何をどう書けばいいのかわかりません

A:「本を読んで自分がどこに感動したのか、なぜ感動したのかを考えましょう」

http://www.j-sla.or.jp/pdfs/contest/honyomo.pdf

(以上引用終わり)

えーとかつてアマゾンjpで書評ランキング60位台を数年間キープした(その後当該アカウントは廃止したので拙文は全て消滅)私の考えですが、そんな文章書かせたって意味無いんじゃないですかねえ。

理由は以下の通り。

1) これでは「感動した本」でしか書けない。だが、しょうもない本が何故しょうもないのか、それはいかにして改善されうるのか、このしょうもない本を現状のまま生かすとしたらどのような手段が考えられるのかなど、駄本についての考察もまた思考の訓練として極めて有益である。批判的思考能力を育てるという意味ではむしろ駄本をいかに建設的に論じるかという課題の方が優れているとさえ言える。

あ、もちろん「こんなクソみたいな本が課題図書に選ばれた奇跡に感動しました」って書き方も出来るけどね。

2) 感動とは理性や悟性ではなく感性の問題である。すなわち論理による評価ではなく、論理とは離れた部分での「好き嫌い」すなわち美学で言うところの趣味による評価となる。論理によらない個人的評価を論理的に記述させるという課題設定そのものがバカ丸出しだ。

ではどうすれば良いのか?

かつて鬼畜1年次ゼミで私が学生たちに強要していた読書レポートフォーマットの方が遥かに優れているので、こちらを出発点に改良していくのが良いと考える。

(以下2008年度に使用したフォーマットを転載)

「4:課題の書式

 本講義では毎回必ず全員が以下の書式を用いて、その週の講義で読む文献についての簡易な報告書を提出します。なお、報告書はA4の用紙2ページ以内にまとめて下さい。2ページ目は必ず1ページ目の裏面に印刷し、全体として用紙1枚に収めて下さい。

1) 文献名:著者名『書名(版)』、訳者名 、出版社名、出版年。(論文や章のみの場合は著者名の後にカギカッコで「論文名/章題」を入れ、出版年の後にページ数を示す。)
2) 原著:Author, Name of the book(Edition), Publisher, Year of publication.
論文あるいは特定の章のみの場合は Author, “Title of the chapter or the paper”, Name of the book or magazine, Publisher, Year of publication, pp.x-y.
3) 執筆時の著者の肩書き、著者の学位、著者の専門分野
4) 訳者の肩書き、訳者の学位、訳者の専門分野
5) 文献が発表された形式(単行本/雑誌論文、単著/共著)
6) 論点
「この文献の論点は○○○(必ず名詞・名詞句を用いて記述すること)である。この問題について著者は○○○(名詞・名詞句)は ○○○である と○○(主張・指摘・予想・推測など)している。その理由として著者は○○○(名詞句・名詞句)を挙げている」
7) 感想
「この文献の中でも報告者が最も興味深く感じたのは、○ページから○ページにかけて登場する、○○○は○○○であるという主張である。何故ならば(具体的に100字から200字の間で理由を示すこと。)だからである。一方、この文献の中で報告者が疑問に感じたのは、○ページから○ページにかけて登場する、○○○は○○○であるという主張である。何故ならば(具体的に100字から200字の間で理由を示すこと。)だからである。」