市街地の緑について

(今度、市民会議に持って行く予定の報告書)

1:はじめに

 ここでは市街地における緑のありようについて考えてみたいと思います。市街地の緑とは、農地でも森林でも公園でもない場所にある植物のことです。たとえば街路樹や中央分離帯の植樹もそうですし、学校、大規模商業施設やゴルフ場、マンション、戸建て住宅などにもなにがしかの植物は植えられています。また、稲城では丘陵地を宅地に造成すれば当然、のり面に何かの植物を植えることも可能となります。
 市民会議の分科会では、そういった様々な緑についても、積極的に街作りに活用していこうということで意見が一致しています。

2:基本的な考え方

 私たちは次の三つの考え方を提案したいと思います。一つは、農地や森林が集中している地域(南山や小太良地区)以外にも積極的に緑を創造・維持していくという考え方です。何故ならば、平均的に緑が散在する市街地は、そうでない市街地よりも生態系が豊かであるという研究があるからです。この為には「土地利用形態の混在化(宅地なら宅地、農地なら農地で固めて配置しない)」「学校や大規模商業施設、宅地、マンション敷地の緑被率の向上」が必要となります。
 次に提案したいのは、同じ緑地を作るのでも生態系に配慮し、なるべく豊かな生態系が成立するような緑地にすべきだという考え方です。例えば造成された宅地ののり面に一面に芝生を張って、ところどころに立木を植えるというような風景を見かけますが、いっそのことそうした斜面には落葉広葉樹を植えて、多摩丘陵の里山の風景を再現してみたらどうでしょうか? 
 最後に提案したいのは、市街地の緑視率を上げるという考え方です。パッと町並みを見た時に、なるべく多くの緑が目に入るような街作りをすれば景観上も好印象ですし、夏期の気温上昇 を和らげる働きや、大気中の二酸化炭素をバイオマスとして固定化する働きも期待できます。理想的なのは「森の中に市街地がある」ような状態です。

3:個別の政策提案

・ ニュータウン内の空き地については花でも野菜でも良いので、使い道が決まるまでは何か積極的に植物を植えて景観を形成すべき。いざ地主が何かやりたいとなった時には速やかにグリーンウェルネス財団などが伐採すれば良い。
・ 尾根幹線の中央分離帯やニュータウン内の空き地などは、ススキやセイタカアワダチソウが繁茂している荒れ地と化していて見栄えが悪い。尾根幹線の中央分離帯については雑木林を作り、二酸化炭素の吸蔵と景観形成に役立てるべき。将来的に中央分離帯に何か作るとなれば、伐採しても構わない。そもそも雑木林は定期的な伐採こそが本来の姿である。
・ 竪谷戸大橋周辺の尾根幹線など、芝を貼って緑色にはなっているけれども、生態系としては極めて貧弱で景観的にも面白みが無い。これは南山東部の区画整理地区にも言えることであるが、芝と植え込みで見かけ倒しの緑地を作るのではなく、ナラやシラカシ、アカマツなどを植えて雑木林を増やすべき。
・ 屋上緑化、壁面緑化は市としても補助金や減税などで政策的に誘導していくと共に、理念、金銭上のメリットの両面から積極的に政策の周知を図るべきである。その際、ビルのオーナーやマンションの管理組合に市の制度を説明するに留まらず、その種の施行を得意とする設計事務所や先行事例の紹介まで行える人材を併せて育成することが望ましい。
・ 南山東部地区に造成される宅地は、樹木を積極的に利用した屋外環境のコントロールにより、「真夏でもクーラーが要らない街」を作ってはどうか。「森林を残すか、宅地にするか」の二者択一の議論ではなく、「森の中に街を創る」という新しい発想を。その先駆事例としては世田谷区内の「経堂の杜」「欅ハウス」があるが、住宅街全体を同様の発想で造った例は無い。上手くいけば、先進的な事例として稲城の名が日本中に知れ渡ることになる。
・ 既存の市街地についても「街の中に森を創り出す」作業を進めるべきである。具体的には定期的なワークショップの開催により、市民に「緑化による屋外環境のコントロールの効果」「具体的な方法」を学んでもらうという手段が考えられる。市内に2軒ある大型ホームセンターに協力を仰ぎ、ワークショップを共催するのも良い。