少し前から、頼まれて「里山コモンズ住宅」実現のためのプランニングの雇われディレクターのようなことをしています。
ビジネスとして、ですよ。ボランティアでやるにはあまりにも大変な仕事なので、成功報酬ですがきっちりとお金は頂くという条件で引き受けております。
さて。南山東部地区にいわゆる「里山コモンズ住宅」、つまり里山的な植栽や生態系をある程度維持した環境共生住宅街を実現させるために解決しなければいけない課題は幾つかありますが、困ったことに、これらの課題は一つずつクリアしていくという解決方法が適用不可能なことがこの数ヶ月の議論の中から見えてきました。例えば家の仕様や敷地の規模、植栽のデザインなどは、コーポラティブ住宅方式を想定している以上、お客様あってのものです。最終的にはお客様が「これいいね。これでいきましょう」と言ってくださらなければ決まらないし、決められない。
しかしその一方で、住宅建設組合設立に参加するお客様を集める為には、何らかのイメージやモデルが必要になります。「こんな感じの住宅街を造れればと思っているのですが、いかがでしょうか」というプレゼンテーションをしなければならない。集まったお客様が「里山コモンズ住宅」の概念からかけ離れたものを造ってしまうとなると、わざわざこの事業に取り組む意味が無くなりますしね。
「こちらで決められないのだけれど、ある程度は枠を作っておかなければならないし、モデルプランも幾つかは準備しておかなければならない」わけです。
しかも、この「里山コモンズ住宅」も南山東部地区全体の街作りとは無関係ではない、というよりもある意味、街の象徴となるような住宅街になりますから、地区全体の街作りや街育てを担うタウンマネージメント組織のデザインを無視して進めるわけにもいきませんし、地権者さんに受け入れていただけるだけの収益性がある事業プランでなければなりません。
一言で言えば、考慮しなければいけない変数がやたら多く、しかもそれら各変数の状況は刻一刻と変化し、どれかの変数の値が変化すればその都度、それに合わせて他の変数を調整してやらなければいけない事業・・・・一言で言えてないじゃないですか(笑) いや、本当に複雑怪奇なんだってば。こんなののディレクションをボランティアでやれるわけないでしょ(笑)
「里山コモンズ住宅」事業のプランニングにおいて解決していかなければならない課題の一つが、外構デザインです。家の周りをどうしてもらおうかという話。里山と名前が付いているのだから、ここは一つ里山風の外構で・・・って言うのは簡単ですが、これが実は意外にとても難しい。
画像を見てください。これは全部、稲城市内の多摩ニュータウンの戸建て住宅街です。市内のニュータウン地域の戸建て住宅は、地区計画という法的な規制によって「生け垣あるいは透視可能な柵」と決められています。ブロック塀とか練り塀とか築地塀は駄目なの。道路から50センチ程度のセットバックをしてもらって、そこに低木や花を植えるというようなこともやってます。それがこの画像です。
どうですか。かなり良い雰囲気ではあります。でも、これは里山風ではないね。この4枚を並べてみるとよくわかりますが、生け垣ってある程度目隠し機能も求められるから、レッドロビンとかツゲとかコニファーとかサツキとかツツジとかの、いかにもという園芸種で葉っぱが鬱蒼と茂る樹種が使われるんですなあ(カイヅカイブキは梨の病気を媒介するんで稲城では禁止されてます)。それを刈り込んで形をつくる。
逆に稲城の伝統的な里山の樹種であるクヌギやらコナラ、アカマツなんかは大人の胸や頭くらいの高さから葉がつくので、それだけでは目隠しにならない。この類の木を外構に使ってもらうとしても、その前後にもう一列、何か植えておかないといけないなあ。南山にある木で考えると、お茶の木あたりですかねえ。そうすると外壁から道路までの距離はどれだけあれば良いんだとか、管理費用はどれくらいになるんだとか、きちんと調査しておかなければならないことが次々に見つかります。宅地の形状も問題で、擁壁が北側に入るのか入らないのか、擁壁が入るとしてその高さはどうなるんだとかね。
今現在、南山に生えている樹齢50年60年の大木を生かせないかというアイデアも出ていますけど、株立ちになってる個体が多いし、外構に使うとしたら相当過激な外壁後退が必要なんじゃないか。それこそ道路から外壁まで4メートルくらいは引っ込める覚悟が要るでしょうし、80坪くらいの敷地で一辺に4メートル外壁後退をしていただくと、ざっくり20坪が生け垣になっちゃいますね。建蔽率40パーセント、容積率80パーセントとすると・・・
建物敷地 32坪
株立ち大クヌギゾーン 20坪
隣地との境界ゾーン 12坪
駐車場(2台分) 8坪
庭 8坪
ぐはっ。80坪の敷地で庭が8坪かあ。洗濯物干したら終わりやね。クワガタマニアならこういう家もありなのかなあ。でもこれはマニアックすぎて、リセールバリュー微妙な感じだなあ。
う~む。難しい。