「#縫製職なめんな」というハッシュタグに見る早とちりの弊害

昨日は朝から「縫製職なめんな」というハッシュタグが散見されたので、なんだろうと思って調べてみました。

1) 客室乗務員の大半を一時帰休させているANAと政府首脳との間で、アイドリングしている客室乗務員を医療用防護服の「縫製の支援」で活用したい、してほしいという話が持ち上がる。

2) ANAの客室乗務員の中にも、やってもいいよという声があるらしい。

3) 「新型コロナで仕事が無くなっている縫製工場や服飾学校の学生を差し置いて、ド素人の客室乗務員に医療用防護服を縫わせるとは何事か」「女だから裁縫が出来るという安易な発想か」「裁縫のプロをなめるな」という怒りがツイッターで爆発。

辻佐保子という方、早稲田の教員だそうですが・・・・(博士学位は未取得の模様)

2から3の間にかなりの論理の飛躍があると思うのですが、その飛躍を埋められるような情報はまだ見つけられていません。

私の感想です。

ANAは8000人もいる客室乗務員の8割を最大1年間、一時帰休させています。

この間、乗務手当以外の給料は色々やりくりして出しているそうです。つまり完全アイドリング状態で給料を払っているわけです。

ならばその余剰労働力を、医療用ガウンのサプライチェーンの中のどこかに回して支援するのはアリだと思います。

縫製支援=縫製、ではないはずで、私はバッグのサプライチェーンしか知りませんが、原材料調達から出荷までの工程の中で、ミシンがけは一部に過ぎません。そもそも職業ミシンや工業用ミシンは素人が簡単に使えるようなものではないです。

一方で、実は日本国内の縫製工場は中国に比べると分業が遅れており、ミシンがけならミシンがけに職人が専念出来る体制ではない、とも聞きます(バッグについて言えば「工場生産なら中国のがクオリティ上だよ。あっちは完全分業だけど日本は職人が全工程やるから、どうしても個々の作業の精度は下がる」と。これは去年、大手のブランドのコンサルをしている人たちと会話していて出た話)。

ならば、ミシンを使える人にはミシンに専念してもらって、それ以外の工程に客室乗務員を割り振るというのは、良い考えです。

実際、その方向で話は進んでいるようで。

今後、専門的な技能がなくても請け負える業務があるかメーカー側と調整したいとしています。

出典

くわしいインタビューも出ましたね。

 「CAに防護服の縫製を支援してもらう方向で調整している」という点ですが、今回は「防護服」ではなく「ガウン」の縫製支援とうかがっております。また弊社としては「CA」に限定したものではなく、政府から企業としての協力のご相談をいただいておりましたので、職種に限らず、またANAグループとして前向きな協力を申し出ておりました。

ANAグループ社員は専門的な技術を有しているわけではございませんので、高度な専門技術を必要とする分野でなく、ANAグループの社員でも実施できる水準の業務について、メーカー様や専門家の指導を受けながら、協力してまいりたいと考えております。

弊社グループとしても、政府からご相談をいただき、今回の新型コロナウイルスの感染拡大状況は、まさに国家の有事であり、できうる限り協力を惜しまず社会に貢献したいと考えていた矢先でしたので、今回の事態に関しては少々困惑している状況です。

出典

まだ会社として何か協力するという以上のことは何も決まっていない段階と推察します。

また、政府から協力をしてくれと頼まれたとあるので、政府が発注するような話ではなくて、ANAグループのカネで何か手伝ってやってもらえないかという話のようです。

政府が発注するんだったらわざわざ航空会社に縫製なんか発注しないでしょう。最初から縫製工場に発注するんじゃないでしょうか?

そうですね、ひとまずの感想としましては、人文系研究者(見習い)はもうちょっと人文系以外のことも勉強すると、グッと説得力が増すのでおすすめ。/

4/17 追記:

ボランティア扱いにする意味がさっぱりわかりません。給料払えよ。

ガウン製作時間は勤務時間に含まれず、ボランティア扱いとなる

出典

国連本部で活躍する弊社ファザーズバッグ