10年10万km(あるいは本田美奈子さんの幸運を祈ること)

 自動車の寿命は新車で下ろしてから10年10万kmだなんてよく良います。
 これは半ば正しく、半ば間違っています。

 10年10万kmくらいで大物の故障が相次いで発生してきて、嫌になって放り出してしまうということなんだと思います。

 例えばエアコンが死ぬ。治すと10万円ちかくかかります。
 エアコンを治したと思った貴方は、エンジンオイルがポタポタと駐車場に染みを作っているのを見つけてしまいます。エンジンとトランスミッションの間にあるオイルシールが傷んだんですね。修理で3万円。
 さて一安心という所でパワーウインドウが上がらなくなる。散々に乱暴狼藉を働いてきたオートマのバンドブレーキがイカれる。カーオーディオが沈黙する。メーターパネルのバックライトが切れる。

 「お客さん、そろそろエンジンのタイミングベルト交換で6万円くらいかかりますけど、どうします?」「ブレーキホースも換え時ですね。3万円くらいしますけど。」

 ・・・・・・・・・買い換えるか。

 という話になるわけですね。こうやって放り出された車は、使える部品をハギ取られてからシュレッダーダストになるか、チンピラが暴走族仕様に改造して乗り潰すか、中古車としてロシアや東南アジアやミクロネシアやニュージーランドに輸出されて、あと15年、20万kmを走りきって息絶えるのです。消耗部分は消耗したけど、そこを治せばまだまだ走りますからね。車本体の強度は落ちていないんだから。

 もったいないですね。でもそうやってまだ使える車をどんどん買い換えてもらわないと、「日本経済は不況を脱出しない」らしいですから、しょうがない。車検制度も税制度も、「10年経った車は買い換えた方が得」なように設計されていますから、意地になってそれ以上乗っていても損するだけなんです。

 まあでも、車は車ですし、買い換えるのも悪くないかもしれない。

 しかし自分の体はどうでしょ。壊れたら買い換えるというわけにもいかない。
 これは私の体や周囲の人々の体を眺めていて感じるのですが、だいたい現代日本の体は30年から35年くらいでメーターひと回りして、大物故障が出始める時期にさしかかるような気がします*。中にはこの段階でクリティカル・ヒットの直撃弾を受けて人生を終える方もいる。私自身はあまりそうなりたくないですが、こればかりはその時が来ないとわかりませんわね。

 ですけれども、この30代の体のヤレや傷み、ここできちんと手入れしてやればメーターもう一回りで65歳の定年退職、さらにそこからあと一回りに突入して、80年から90年くらいで命数を使い果たすという展開が望めるでしょう。

 しかし、なんですな。現代日本の社会、この人体10万km点検整備がやりづらい場所ですな。仕事は丁度脂が乗り始めた時期で、社会の中核として大車輪で働かなければいけなくなる。休みなんて取ろうにも仕事は次から次へと降ってくる。休めない。たまの休みには早起きしてゴルフだの釣りだの海外旅行だのに出かけちゃったりする。そして、不幸にもクリティカルヒットの直撃を受ける100人に1人は哀れ30代で命の灯が燃え尽きてしまう。

 自分の体を過信してケアしないのは良くないです。ちゃんと休む。敢えて踏みとどまる勇気を持つ。
 
 それと、どうも現代日本の食生活、まともな栄養を外食で摂取しづらいんじゃないかと思っています。定食屋のメニューを見ると、タンパク質、澱粉、脂肪。申し訳程度に淡色野菜が添えられている位で、どうにもバランスが悪い。塩分もきつい。そりゃあ成人病にもなりますよね。

 ところで、世界最悪の飽食国家アメリカで、一番摂取カロリーが多いのが貧困層だってご存じですか? フライドポテト・・・おっと失礼、フリーダムフライでしたか・・・とハンバーガーとコーラね。ピザにフライドチキンに巨大ステーキね。そんなもんばかり食べているから、病的に太って不健康になってしまう。

 先住ハワイアンもビッタシこのパターンに嵌ってしまっているのだそうですが、そんな中で最近見直されているのが、伝統的なハワイの食生活なんだそうです。タロイモをペースト状にしたポイを中心にした食生活が、こういった病的肥満の改善にとても効果的なのだとか。オアフ島の西側は貧困層の住む地域として有名ですが、この地域でハワイの伝統食による生活習慣改善運動に取り組んでいる団体もあります。

 さて、以前にコメント欄でちょっと書いたのですが、私も胃潰瘍になってなかなかつらい日々を過ごしておりますが、じゃあそんな時に何を喰ったら良いのか、消去法で考えると、日本の伝統的な食事になっちゃったんです。

・脂っこいもの(揚げ物など)はダメ
・刺激物(香辛料)はダメ

 ね。
 脂肪分やスパイスが使えないなんて、グルメな私にはなかなか辛いものがありますけれども、それでも日本食の知識を用いれば、美味しいものが色々と作れます。日本食の技法もまた一つの様式美だってことを痛感しています。その様式に則れば、あまり深く考えなくても美味しくて栄養があって体に優しいものが作れる。毎日作り続けられる。なんて便利なんでしょう。

 日本食を、「萌え(アニメ・漫画文化)」と並ぶ日本の知的財産だという意見もあるそうです。

 こういう素晴らしい伝統文化こそ、きっちり学んで後世に伝えないといかんですね。

* 古代人はだいたいこれくらいで平均寿命を使い果たしていたわけです。