最後の教え子

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「来年春に君たちが卒業して、再来年に美帆が卒業したら、それで終わりだ。俺の最後の教え子だ。」

半年間だけゼミに所属していた子が笑う。

「さびしいですか?」

彼女がゼミを去ってからもうすぐ丸2年。
その間に彼女は上の代のゼミ生と台北で仲良くなり、下の代のゼミ生と就活で仲良くなり、同期だけどゼミに所属した時期は重ならない子とは親友になり、そして今日も僕にレポートを真っ赤に染められている。

むしろゼミを去ってからの2年間の方が、彼女は自分の学生だったように感じる。

「いや別に。」

僕は苦笑いしながら答える。
何事にも終わりはあるし、今の僕はいつか一人前になった彼女たちと一緒に、何か面白い仕事をする日のために、新しいスキルを身につけようと悪戦苦闘している。

これまで何人の教え子の内定を、こうして祝ってあげただろうか。生き生きと働いている者、会社を辞めるという話をするときだけ目が輝く者。既に転職してしまった者。

大学の外の社会は厳しい。怠け者も嘘つきも裏切り者も、当然のような顔つきであの子たちの隣に座るだろう。タフにならなければ海を渡ることは出来ない。

そのことを教えることだけ忘れていた2年前の自分を、僕は今日も苦々しい思いで振り返っている。