立教のホームカミングデーで軽音楽部の大先輩にお会いした帰りに、シネマサンシャインで見てまいりました。ヤマト2202・第3章「純愛編」。
前回ラストで第11番惑星の真上に出現したガトランティスの大艦隊が、ヤマトを砲撃で11番惑星の地下に埋めたところからのスタートです。主なイベントは
・11番惑星の防衛艦隊の司令官だった土方竜を斎藤率いる空間騎兵が救出する。
・数万隻の大戦艦が直接地球を狙う陣形を構築したところで、ヤマトが波動砲を発射。ガトランティス艦隊の動力を丸ごと停止させてしまう。
・密航していた(というか、古代以外はだいたい乗っているのを知っていた)森雪がついにカミングアウト。グズる古代。
・11番惑星の難民をガミラス艦隊に移す際に、キーマンのやんごとない出自がほのめかされる。また、ガトランティスのスパイもヤマトに潜り込んでいることが明らかに。
・古代アケーリアス文明の遺跡におびき出された古代の前にズォーダーがVRで出現。ガトランティスは古代文明が作り出した戦争専用の種族であることをカミングアウト。
・ガミラスの反政府軍登場。2199や「星巡る箱舟」に出てきた門閥貴族派(ゼーリック派)ではなく、旧ガミラス帝国内の被支配諸民族の解放・独立を唱える左翼系。ゼルグード級を旗艦として使っているので、相当な勢力を持っているのかも。
・ヤマトの波動エンジンに怪しいチップを仕込むキーマンくんは何を考えているの。
・難民はどうにかこうにかガミラス艦隊(ケルカピア級×1、クリピテラ級航宙駆逐艦×2かな?)で地球へ向かう。
・エンディングのスタッフロールの後、ついにデスラー登場。ズォーダーより艦隊を与えられる。
といったとこです。公式サイトにもあらすじは出てますのでそちらもどうぞ。
テレビ用の作品を4本並べたものなので、盛り上げシーンは定期的にやって参ります。25分に1度か2度は必要ですよねそりゃ。演出はものすごく濃いのですが、元作品がそもそも日本アニメ史上、最も「濃い」味付けの作品だったのだから、これくらいはやらないとダメでしょう。ガトランティスがゼントラーディと同じ設定みたいですが、これだけ他作品からの引用が当たり前になった現代なら、それもまあアリ。グレンラガンなんてカット&ペーストで1本作ってますからねえ。そこに文句をつけるのはダブスタだと思います。
映像としてはイワシの群れみたいなガトランティス艦隊の動きが美しくて、CG技術って良いなあと思いました。
(あと、さっきヤマト2199でデウスーラIIが爆沈するシーンを確認したら、たしかにコアシップが脱出しているようにも見えた。)
さて、内容の分析です。
次への伏線として一番大きいのはキーマンです。
ガトランティススパイ美女(黒髪のお姉さんね。ガトランティス人なのかどうかはよくわかりませんが。サーベラー以外にガトランティスで女性いたっけ?)とガミラス人少女の抱擁シーンもちょっと伏線かもしれません。
いずれにもガミラスが関わっていますね。
1) キーマンは何者なの?
相当に上のクラスの貴族階級であることは確かですね。もしかするとデスラーの係累かもしれません。
2) キーマンは何がしたいの?
そこですそこ。ヤマトなんて危ない船にゴリ押しで乗り組み、ガミラス政府を動かしてヤマトのテレザート行きを後押しし、シュトラバーゼに立ち寄らせてガミラス本国から怪しいデバイス(反波動ナントカ。多分、波動エンジンの動作に干渉出来るチップ)を届けさせた。
キーマンは1章から一貫してヤマトを動かすために暗躍しています。一方で怪しいデバイスは当初は準備していなかった。論理的に考えると、ここまでの旅のどこかで必要性を感じて本国にオーダーを出したんでしょうね。どこだろう? 古代が波動砲を使うとは思っていなかったのか? それは無さそうです。彼は十中八九、古代がどこかで波動砲の封印を解くと思っていたはず。
開発がヤマトの出発に間に合わなかったという可能性もありますね。そっちなのかな?
整理します。キーマンの行動の方向性は
「テレザートに行く」
「ヤマトに乗る」
この二つがコアになっています。このうちテレザートに行きたいだけなら、彼の権力をもってすればガミラス本星からガミラス艦隊で遠征出来るはずです。ヤマトの中に入りたいだけなら、駐在武官として地球のドックに置いてあるヤマトを見学出来るはずです。とすると・・・?
A) 「ヤマトでテレザートに行きたい」
→テレサから召喚命令が届いたヤマトクルーと一緒でないとアクセス出来ない部分に用がある。
B) 「動いているヤマトが欲しい」
→だが同盟国の戦艦を強奪する必然性が無い。同等の性能(波動砲を装備した)の戦艦ならガミラスでも建造出来るはず。デウスーラII世の建造実績もあるわけで。
やはりAなんじゃないかと思います。その先は、テレザートとテレサの設定がまだわからないので、何とも言えない。波動エンジンに仕込んだアレの使いみちですが、
「波動エンジンのキルスイッチを持っておくことで、ヤマトと1回限りの取引をする、または、ヤマトが不用意に波動砲を撃ちそうになったら阻止する」
くらいでしょうか? キーマン一人でヤマトを制圧するわけにはいきませんからねえ。なんだろう。超巨大戦艦にヤマトが体当たりしようとしたところでキルスイッチ発動でしょうかねえ。
3) ガミラスはどうなるの?
デスラーが生きていたことで、旧ガミラス世界はかなりの混乱が発生しそうです。ガミラス諸派を整理すると
イ:ガミラス政府(ヒスやディッツが指導する。地球と同盟中。デスラー時代に広がり過ぎた版図を整理中)
ロ:左翼系反政府軍(植民地の独立解放運動を展開)
ハ:門閥貴族派(ゼーリック系の思想の人たち。反デスラー派)
ニ:デスラー
キーマンがイなのかハなのか気になるところです。現政権内でも相当な影響力があるようですが、それが門閥貴族のタテのラインによるものなのか、政府の命を受けているのか。政府だってキーマンの出自は知った上で地球駐在武官にしたはずなので、キーマンの動きはヒスやディッツも知った上で容認していると見るべきか。仮にキーマンがデスラーの係累だったとして、デスラーは政治思想的にはガミラス人と植民地人の差別を撤廃したい派でしたが、キーマンはどっちなのか。
物語作法から考えると、ここでキーマンをゴリゴリのゼーリック主義者で造形してヤマトに乗せる意味は乏しいので、デスラーの思想を一部受け継ぎつつ、門閥貴族のタテラインも利用しつつ、ガミラス復興のためにテレザートの秘密を追う若者、という線が来るのかな。メルダ・ディッツの恋人だったとかいう話も仕込んであるのかも。で、ガトランティスとの決着を付けたところでガミラス本星に帰還して政治指導者として立つと。
そうなると、元作品ではガミラスの指導者は再びデスラー(ガルマン・ガミラス)でしたが、リメイクではデスラーは首都を自ら破壊しようとした人なので、もうガミラス人の支持はもらえないでしょうから、行き場が無くなる。
私の予想として
「ヤマトはラストで超巨大戦艦に体当たりしない」
「キーマンはガミラスに帰って指導者になる」
「旧作の古代の代わりに、デスラーがズォーダーと刺し違えてガトランティスを無害化する(ガトランティス壊滅ではなく、ズォーダーの死によるガトランティス解体)」
と読んでおきます。
4) ガトランティスはどうなるの?
ズォーダーやゴーランドやハルゼーのような最高幹部は戦争用に作り出された種族であるにしても、ガトランティス全体で見ると、「星巡る方舟」に出てきたダガームらのように、支配下の異民族も色々と居るようです。デスラーだってガミラス人ですからな。桂木透子ももしかしたら種族としてのガトランティス人ではないかもしれません。
そうなると、今作でのガミラス人少女との交流は、ガトランティス帝国内での被支配民族の離反という展開への伏線かもしれないですね。被支配民族はガトランティス的な価値観やズォーダー思想に必ずしも共鳴はしていないでしょうし(ゴラームなんか絶対そうだ)。
旧作では首都である白色彗星がヤマトとの戦いで最後に消滅して終わりでしたが、首都が消え、ズォーダーが死んだとしても、広大な版図とそこに住む人々は無傷なので、そこを収拾するためにも、何かのストーリーラインは作られるんじゃないでしょうか。