私が採用面接で気をつけていること。

 最近の私のタスクの一つ、新規採用の面接で私が一番時間を使っているのは、相手のことを根掘り葉掘り聞くことでも、答えにくい質問をぶつけて反応を見ることでも無く、もちろん勘違いした上から目線で求職者から反感を買って自分の会社のアンチを増やすことでもありません。

 私が重視しているのは、カタリストという会社の組織文化の説明です。ここはどんな会社なのか。どんなヴィジョンを共有し、どんな思想をもって仕事を進めているのか。このうち、仕事の進め方についての思想は、フェイスブック社のそれと重なるところが非常に多いものです(私自身、フェイスブックで色々と書いているところを社長に発見されて、かなり強引にスカウトされました)。

 例えば、有名な「ハッカーウェイ」についての文章。

強い会社を作る一環として、私たちはフェイスブックを、優秀な人材が世界に大きなインパクトを与え、他の優秀な人材から学ぶための最良の場所にしようと懸命に努力しています。私たちは「ハッカーウエー」と呼ぶ独自の文化と経営手法を育んできました。

  「ハッカー」という言葉はメディアでは、コンピューターに侵入する人びととして不当に否定的な意味でとらえられています。しかし本当は、ハッキングは単に 何かを素早く作ったり、可能な範囲を試したりといった意味しかありません。他の多くのことと同様に、よい意味でも悪い意味でも使われますが、これまでに私 が会ったハッカーの圧倒的多数は、世界に前向きなインパクトを与えたいと考えている、理想主義者でした。

 ハッカーウエーとは、継続的な改善や繰り返しに近づくための方法なのです。ハッカーは常に改善が可能で、あらゆるものは未完成だと考えています。彼らはしばしば、「不可能だ」と言って現 状に満足している人びとの壁に阻まれますが、それでも問題があればそれを直したいと考えるものなのです。

 ハッカーは長期にわたって最良とされるサービスを作るために、一度にすべてを完成させるのではなく、サービスを機敏に世に出し学びながら改良することを繰り返します。こうした考え方に基 づき、私たちはフェイスブックを試すことができる何千通りもの仕組みを作りました。壁には「素早い実行は完璧に勝る」と書き記し、このことを肝に銘じています。

 ハッキングはまた、本質的に自ら手を動かし続けることを意味します。何日もかけて「新しいアイデアは実現可能か」「最良の方法は何 か」を議論するよりも、ハッカーはまず試作品を作り、どうなるかを観察します。フェイスブックのオフィスでは「コードは議論に勝る」というハッカーのマントラ(呪文)をしょっちゅう耳にするはずです。

 ハッカーの文化は、非常にオープンで実力主義重視です。ハッカーは、最も優れたアイデアやその実行が、常に勝つべきだと考えています。陳情がうまかったり、多くの人を管理している人ではありません。


 これは、カタリストにもかなりの部分当てはまります。議論は素早く最低限に。それよりもまず作ってみろよ。社長を含めたグループチャットで「こういうのどうでしょう」という話が出て、社長が「いいね」とレスしたら15分後にはウェブにファーストプロトタイプが上がっているなんてことも、最近はちょくちょく発生します。

 そういうことが出来る人がうちの会社には合いますよというお話をします。そういうことをやって良い会社だし、やった方が評価される会社。逆に、業界経験が長いことも年齢が上であることも、以前に超巨大企業でブイブイ言わせていたことも、何の評価対象にもならない会社ですよと。


 個人としてもチームとしても素早く動いて結果を出せること、常に改善に取り組めること、無駄な議論や効率の悪い情報伝達に時間を使わないこと、情報やノウハウを隠さず可能な限り社内に公開すること。用があったらまずメールかメッセージングアプリか社内グループウェアへの投稿で。鬼電は20世紀に置いてきて下さい。情報やノウハウを自分のところで止めておいて社内政治や出世の武器にするみたいな人の居場所はありません。

 そういう価値観、思想を受け入れられるかどうか。乗れるかどうか。

 再びザッカーバーグの言葉を引用します。

上記の例はすべて技術者に関係するものですが、これらの原則から5つの核となる価値を抽出し、経営に活用しています。

インパクトに焦点を当てる

  もし最大のインパクトを与えたいと考えるのなら、最良の方法は最も重要な問題の解決に焦点を合わせることです。簡単に聞こえますが、多くの会社はこのことをおろそかにして時間を無駄にしています。私たちはフェイスブックのすべての人びとが、取り組むべき最も大きい問題を見つけるのにたけていることを期待し ています。

速く動く

 速く動くことでより多くのものを作り、速く学べます。しかし多くの企業は大きくなると、速度低下による機会損失よりも失敗をより恐れ、スピードを落としてしまいます。私たちは「速く動いて失敗せよ」と言っています。もしも速く動かなければ、失敗することがないからです。

大胆であれ

  素晴らしいことをなし遂げるためには、リスクをとる必要があります。これは恐ろしいことで、多くの企業は本来やるべき大胆な選択を避けます。しかし世界の 変化スピードは速く、リスクをとらなければ失敗が待ち受けています。こういう言い方もしています。「最大のリスクは、リスクをとらないことだ」と。私たちは皆に、大胆な決断をするように促しています。

オープンであれ

  より多くの情報があればよい選択ができ、大きなインパクトを与えられます。だからこそ私たちは、オープンな世界はよりよい世界だと考えています。このことは私たちの会社の経営にも当てはまります。私たちはここで働くだれもが会社に関する可能な限り多くの情報に触れ、よい決断ができるように心がけています。

ソーシャルバリューを作れ

 再度申し上げますが、フェイスブックは世界をよりオープンにして人びとの結びつきを強めるために存在しており、単に会社を作ることが目的ではありません。私たちはフェイスブックの全員が、日々の活動を通じて世界に本当の価値を提供することを期待しています。


 稟議とか会議とか根回しとか打ち合わせに時間を使わない。
 売上や利益に与える影響が軽微なディテールは適当で良いから、本質的な部分に知恵と手間と時間を投入する。
 社会から求められる価値創造を常に意識する。

 カタリストは、そういう考え方で、既存の大企業や社会福祉法人との競争を勝ち抜いていくつもりですよ。

 そういうことを丁寧にお話しして、反応を見ます。そういう会社ですよという話で、目が輝き始める方かどうか。