武田航平とは巻き込み力+サーバント・リーダーシップである

武田航平さんがまた妙なことになっています。

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「仮面ライダー電王」という過去の記念碑的作品自体と同じ重みの扱いで、彼個人のイベント「武田航平ナイト」が開催されてしまう武田航平。

敢えてはっきり言えば脇役でしかないのですよね。彼は。「仮面ライダー平成ジェネレーションズForever」でも「仮面ライダービルド」でも。映画の香盤表では上から10番目くらい。美味しいとこは持っていくけど、そこまで重い役ではない。ビルドでは3号ライダー。2号でさえない。

にもかかわらず、武田航平ナイト。それがツイッターでトレンド1位になる。

なんでこうなるのか。

ビルドの2号ライダーの赤楚衛二さん主演のVシネが1/25上映開始で、彼は舞台挨拶で各地を回らないといけないし、映画の主役の二人(犬飼・奥野)の二人を押さえて5時間イベントというのも厳しいでしょう。犬飼さんはNHKの次の朝ドラの撮影に入ってるし奥野さんは現1号ライダーだからスケジュールタイト。そういう事情もあるかもしれない。

でも、だからといって普通ここで前作3号ライダー兼11年前の2号ライダーが一人で映画記念イベントは担えないでしょうよ。それが出来てしまう(チケット争奪戦想像しただけで震える)のは何でか。

武田航平とは何か。思いつくままに並べてみる。

・自称「平成仮面ライダーの申し子」(テレ朝公式でも後に採用)
・平成仮面ライダー9作目の2号ライダー
・平成仮面ライダー19作目の3号ライダー
・芝居が上手い
・アドリブが多い
・トークが上手い
・周囲を立てる気配りの人
・ムードメーカー
・「男の中の男」(犬飼貴丈コメント)
・ビルドで共演した俳優さんたちと一緒に児童養護施設を慰問しちゃうイケメン
・高田夏帆のカレンダーのカメラマン
・ファンサービスがまめな人
一つ一つはなるほど、と思いますが、並べてみるとこの人物は一体なんだろうか? どう理解したら良い?
共演者の声を拾ってみましょう(下線は筆者による)。

航平さんは一瞬にして場の空気を変えることが出来る方だし、ここ(21話)でシリアスな芝居がやれたのは本当に良かったです。おかげで何段階も引き上げていただいた感じがあって。いつもの楽しい感じもそれはそれで最高だし、航平さんが来てから現場の空気自体がいい意味で変わったのは間違いないですね。(犬飼貴丈)『仮面ライダービルド公式完全読本』(ホビージャパンムック、2018年)10ページ

「あの人は怪物ですよ(笑)(略)本当に優しくて、周りに対して気も遣って下さいますし。とにかく現場にも慣れているライダーの先輩でもあるお兄さんなんですけど、出てきたときに「このままでは食われてしまう」という危機感はありましたから、そういう意味で怪物です。(赤楚衛二)前掲書14ページ

かずみんあってのみーたんと言っても過言ではないですし、美空がヒロインらしくなれたのも、ひとえにあれだけ「みーたん、みーたん」言ってもらえたおかげです。アドリブ人間すぎる航平さんに最初こそ面食らいましたけど、もうほんと大好きですね。(略) 航平さんも優しいから、人によってアドリブの引き出しを分けてるんですよね。私にそこまでのスキルがないのはわかってるから、私が相手のときはリハの段階から「こういうのをやるよ」ってのを出してくれて。それを私が本番で受けるって感じでやってました。(高田夏帆)前掲書19ページ

航平くんが入ってきて、『ビルド』っていう作品がもう一つ上のステージに上がったという印象が自分の中ではあるんです。歳は僕より一つ下ですけどキャリア的には僕より大先輩で、二人でお芝居をしていると、新人の登竜門と言われている仮面ライダーという雰囲気がまったくなくって、いわゆる普通のドラマと変わらない現場になったというイメージでした。ものすごく安定してらっしゃる方だし、なおかつ現場でアイデアをどんどん出してくれる方なので本当に助けられましたね。(水上剣星)前掲書、35ページ

三羽ガラスはホントに仲が良くて、撮影前も誰かの楽屋に集まっていましたし、現場でもいつも一緒に行動していました。武田さん含めて北都のメンバーでも何回か飲みに行ったりしました。武田さんには現場でも三羽ガラスを引っ張っていただいて、ホントにありがたかったです。特に印象に残っているのは、三羽ガラスにカシラが合流した直後の撮影が終わって4人で帰ったときに、武田さんが自身の今回の立ち位置、つまり仮面ライダーとして2度目の出演をすることの意味と覚悟みたいなことを話してくれたことがあって、それがすごく嬉しかったというか、気合いが入りました。すごく頭が良い人だと思います。というのも、カシラが戦兎、万丈とは別のベクトルで際立つためには、カシラが背負っているものをしっかりと見せることが必要で、それにはまず三羽ガラスが物語の中でしっかりと愛されなきゃならないってこともわかっていたと思います。そこからの逆算で、僕たちが生き生きと現場にいられるような雰囲気を作ってくれていたと思っています。(芹澤興人)前掲書49ページ

武田くん、栄信さん、芹澤さんと北都四人衆でよく飲みに行ってました。そこで武田くんが考えている裏設定を聞いたり、それぞれの考えを語り合ったりして。でも面白いことに、それぞれが勝手に想像した裏設定がドンピシャで当たってたりするんですよ!(略) そして、飲み会のあとは決まって「カシラ、御馳走さまでした!」と三羽で叫んで奢ってもらいました(笑)(吉村卓也)前掲書50ページ

武田さん、褒めて伸ばしてくれるからありがたかったです・・・(笑)(藤田慧)前掲書73ページ

最後の引用は武田航平と組んでスーツアクターをやった藤田さんのコメントですが、藤田さんは他にも、武田航平の演技に引っ張られてスーツアクターとして色々な引き出しを開けられた話をこの本で語っておられます。
このように、仮面ライダービルドで武田航平と共演した人たちの多くは、彼の力で実力以上のパフォーマンスを引き出されたと感じている気配です。
また、リアルでも栄信さんや芹澤さんと一緒に児童養護施設を訪問されたり、SNSでもこれまでお仕事で関わった人たちについてこまめに言及して露出をさり気なく増やしたり。
まず指摘出来るのは、巻き込み力でしょうか。
現在の武田航平は、周囲を巻き込んで新しいものを創造していく能力が非常に高い。
そして周囲をサポートして力を引き出してあげることで全体を前に進めていくリーダーシップですね。サーバント・リーダーシップ。これも現在の武田航平は豊富に備えている。
自分が仕切る組織やプロジェクトで武田航平がメンバーとして入っていたらどうだろうと考えてみたんですが、これだけの経験と巻き込み力とサーバント・リーダーシップを備えた33歳がいたら、それはもう心強いことこの上ないです。本当に一人分のギャラで良いんですかって思うレベル。三人分くらいギャラ出しても規模次第では十分算盤が合うはず。
しかし、更に敢えて言いますが、巻き込み力もサーバント・リーダーシップも組織内でのお役立ちです。対外的にそこまでアピールするものではない。
にもかかわらず、何故、何故、武田航平ナイトなのか。
彼の特徴は、自分のSNSでも、マスメディアに出た時にも、常に共演者やスタッフの名前を出して褒めるところです。そうすると、共演者のファンや作品自体のファンも彼のアカウントを読みに来ます。そこで自分への共感を広める。ファンにしてしまう。結果的にそうなって、仮面ライダーファン全体に武田航平についての認知が広まっていっての、武田航平ナイト。
そういうことではないかと思います。巻き込み力とサーバント・リーダーシップで現場での人間関係をがっちり構築し、それをSNSやマスメディアに展開して自分のブランディングに繋げる。
去年の3月に彼がブログを再開した時にまず書いていたのが、以下のような内容です。

10年間、正直言えば浮き沈みありました。

辞めたいと思った時期…

沢山お仕事をさせて頂いた時期

浮きに浮き、沈みに沈み…

そんな繰り返しでした。

しかし、

諦めずに仲間や家族、事務所スタッフ、信頼して、支えられてやって来れました。

これは本当に運が良かったとした言えません。

周りの人のお陰です。

何事も続ける事が一番難しいです。

(略)

理不尽な流れにのまれそうになることもあるけど、

大切なのは人や縁なんだなぁ

と思わせて頂いた大森さんとの話しでした。

かなり苦労してキャリアを続けてきたことが窺えます。
武田航平は大きな事務所のタレントではないし(ちなみに仮面ライダーキバで主役だった瀬戸康史はワタナベエンターテインメント、仮面ライダービルドの主役の犬飼貴丈はバーニング)、いくら顔が良いとはいってももう33歳で若くもない。イケメンの若い子は毎年大量にデビューしてくる。その中で生き延びていくには、明確な個性や仕事の実力が必要です。
もちろんお芝居の実力は今や大変なものですが、それに加えて巻き込み力やサーバント・リーダーシップを伸ばし、ついに武田航平ナイトまで東映にやってもらえるところに到達した。
イケメンは整形でもしない限り真似出来ませんが、それ以外の生き方や仕事のやり方は、真似すべき部分が多い人だと思いますね。私より15歳も歳下ではありますが尊敬に値する。