君たちのゼミには実は休学中の同期がいるんだが、彼は今、母国で軍役に就いている。

同じ大学の同じ学科の同じような年齢の学生で、片やどうやって学費生活費を稼ぎながら留年を防ぎ就職先を見つけるか、つまりはいかに生き延びるか、自分は生き延びられるのかというところで戦っている者もいれば、何不自由無い生活をしつつ目に映る全てのものに難癖をつけてダメ出しをするだけの学生もいる。

後者を幼稚と片付けるのは容易だが、何不自由無い生活で楽単を集めれば卒業だって楽勝な環境下、ハングリーになれと言われてなれるような奴の方が少ないだろう。

自分のゼミの先輩の中に、卒業までに正社員職を見つけなければ日本を立ち去らなければいけなかった人たちがいたこと。体を壊して就職も出来ず頼れる実家も無く板子一枚踏み抜いた下は生活保護申請みたいな状況を経験した人がいたこと。学業を中断して兵役の為に帰国している人が今もいること。兵役が終われば彼は日本に戻ってきて、彼らと同じゼミで卒論を書くことになる。

「北朝鮮と戦争になったら帰国して兵役に戻らなければいけない。北朝鮮の兵士は強いが、せめて3人は敵兵を殺してから死にたい。」と真顔で語っていた先輩もいたなんて、想像しろと言われたって無理だ。

なんとも世の中は不公平に出来ている。