「夜スペ」雑感

 昨夜、高校の先輩の声がテレビから聞こえてきたので、ふと目を上げると、NHKの三宅アナウンサーが高校生とテレビ電話で話をしていました。何かと思ったら、「日本のこれから・大丈夫ですか?日本人の学力」という特番だったようです。

 最後までは見なかったので、よくわかりませんが。

 話題の中心だったのは、杉並区の和田中学校(の校舎を使ってPTA組織)が開始した「夜スペ」なる補習プログラム。賛否両論あるあれですね。
 
 最初に私の考えを書いておくと、

「和田中(の校舎を使ってPTA組織が運営している)夜スペは、あって良い。」

 公立学校の校舎を使うという部分に、若干の疑問を呈しておられる発言者もいらっしゃいましたし、そこは議論があって然るべきだと思いますけれども、校長の藤原さんの話を聞く限りでは、学校組織と地域住民の中でかなり入念な準備と議論、意思統一が行われているようですから、まずは肯定的に見るべきだと思います。何事も否定から入ってはつまらない。

 一方で、中には明らかに「夜スペ」をただの割安学習塾としか見ていない人も居て、先行きに若干の不安も覚えました。富山の40歳という女性の発言などトホホ感満載・・・・「営利行為を否定するのか? 営利企業で何が悪い?」と吠えるおじさんもピントがズレているし。

 まず押さえておきたいのは、公教育というのはサイズの選択肢が2つくらいしかない既製服のようなものだということ。特に公立の小中学校はあらゆる学力層の子供を受け入れなければならないから、どうしたって真ん中やや低め辺りにサイズ設定をするしかない。何故そんなことになっているかといえば、コストですね。服だってサイズ展開を増やせばそれだけ製造コストが上がり、お値段も上がる。ジャストフィットするオーダーメイド服など、ワンサイズ展開の何百倍のお値段の世界でしょう。

 和田中の藤原さんは、その結果、学力上位層が難関校を受けようと思っても、難関校受験についてのケアをしている余裕が公立中には無いという所を問題視して、地域社会との協力で補習プログラムを組んだ。営利企業が一枚噛んでいるとはいえ、夜スペを「非営利組織と営利企業が協力して運営する社会的企業」と見れば、別に珍しいもんじゃないです。

 このアイデアは悪くない。

 ですけれども、こうした概念や入念な議論、準備をカットして「半官半民の割安進学塾」として夜スペを捉え、「あれをうちの学区でもやってくれ」となると、話が違ってくると思う。和田中の事例では運営主体は地域住民ですが、そこをきちんと理解しているのかどうか。

 私が好きな言葉にこんなのがあります。

「予算が無いなら自分の手を動かせ。自分のアタマを使え。」

 和田中と地域住民はこれをやっていると思う。でも、学校や自治体に全て責任も負担も押しつけて「学校の授業だけじゃ学力つかないんだから、補習もやりなさいよ」と要求するだけでは、「夜スペ」のようなことは出来ないでしょうね。「私たちが中心になって「夜スペ」のようなことをやりたいから、協力してくれ」という形にならないと。