両親とも働きに出ている家の子供が突然熱を出した時

 個人的興味と来年度の講義のネタ仕込みで地元をうろうろしてます。

 いきなり皆さんにクイズ。

「両親とも働きに出ている家の子供が平日の朝、突然熱を出しました。しかし突然のことで両親とも仕事を休めません。特に母親はこれ以上、子供の病気で仕事を休むと遠回しの退職圧力がかかります。こんな時、どうしたら良いのでしょうか?」

 最もポピュラーなのは、「熱が出ているのを隠して保育園に連れて行ってしまう。」

 基本的には保育園は「病気の子供は登園させないでください」としていますけれども、親だって食い扶持がかかってますからね。他に選択肢が無ければ涙を呑んでそうするでしょうよ。

 ごく稀にですが、こういったニーズに対応するサービスも存在します。例えば病児を専門に受け入れる保育施設。病気になったら、こういった施設に行くんですな。

 じゃあ次のシチュエーション。

「午後2時頃に保育園から電話があり、子供が熱を出しているので迎えに来てくれと言われた。しかし両親とも仕事をどうしても抜けられない。どうすれば良い?」

 これは難しいですよ。病児保育施設がある地域でも、これは容易に解決出来ない。さあどうする?

 これは実際に子育てをしている方でないと知らないと思います。地域によっては、こんなシチュエーションに対応する制度や組織も無いわけではない。無いわけではない。微妙な言い方になりますけれども、ともかく話を続けます。

 まず考えられるのは「ファミリーサポートセンター」です。これは平成13年度から委託が始まった事業で、基本的には自治体が地域内の非営利団体に委託します。特定非営利活動法人という制度は平成13年には無かったですから、多くは社会福祉協議会が委託先になってますけれども、要するに「地域の専業主婦・主夫が有償ボランティアとして、親の代わりに子供を預かる」システムです。例えば保育園の送迎、帰宅が遅くなる際の一時預かりなんてのがそれですね。

 この「ファミリーサポートセンター」の中には、かなりレアケースですけれども「軽度の病児」を預かることまでやっている地域がある(ということをここ最近の調査で私は知りました)。この「軽度」というのがまた難しい概念ですが、インタビューの感触から見て「発熱」と「感染症」の間にボーダーラインがあるみたいですね。単純に熱が出ていて、医者に行っても解熱剤の処方程度で済むレベルの病児の場合は、1日預かって様子を見るとか、あるいは保育園から「熱を出したので迎えに来てくれ」と言われたら親の代わりに引き取りに行くという対応をする。

 はしかとかおたふく風邪のような感染症まで行ったら、これはさすがにモノがモノなんで親がケアしてやらないとまずいということだと思います。ただでさえ慣れない環境で子供に負担がかかってしまいますし。

 もう少し進んだサービスを考案したNPOもあります。東京の区部で活動している「フローレンス」というNPO。ここは「ファミリーサポートセンター」のシステムに似ていますけれども、小児科医と連携して診療までやってしまう。

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 これは素晴らしいシステムなのですが、いかんせんサービス提供範囲が狭い。同じ東京都内でも、我が多摩地域にはこの光は届いていない。

 それでは、多摩地域での病児保育はいったいどうなっとるのか? とりあえず多摩川の西側に限定して調べてみました。

八王子市 ファミリーサポートセンターが軽度病児対応
多摩市 町田市のNPOがサービス網構築中
町田市 町田市のNPOがサービス提供中
稲城市 ファミリーサポートセンターが軽度病児対応
日野市 不明

 町田市のNPOは、厚生労働省がNPOフローレンスのシステムをコピーして全国展開準備中の「緊急サポートセンター」事業のモデル地域として、東京都社会福祉協議会から先行的に委託されているものです。

 こちらがそのNPOのウェブサイト。
http://upaupa.com/upaupa/index-2.html

 システム的には、フローレンスがNPOで小児科医と提携しているのに対して、こちらは個々の子供のかかりつけ医への送迎となっている部分が違いますね。

 さて。調べてみてわかったこと。まず、縦割り行政が現場での情報の流通を阻害しているということですね。例えばファミリーサポートセンターと緊急サポートセンターという、殆ど同じような事業が別の系統をたどって委託されている。ファミリーサポートセンターは市町村からの委託事業ですが、緊急サポートセンターは、例えば町田の場合は厚生労働省→東京都社会福祉協議会(市区町村の社会福祉協議会の上部団体)→NPOというライン。何故既存のファミリーサポートセンターに追加予算とノウハウを下ろしてやらないのか、私には理解出来ない。

 しかも、ファミリーサポートセンターの人たちは緊急サポートセンターのことを殆ど知らなかったりします。別系統の行政ですからね。

 また、ファミリーサポートセンターの存在を子育て中の家庭に知らせる広報活動でも、保育園や保健センターのような厚生労働省系列の施設には行っているのに、幼稚園(文部科学省)には行っていないし、小児科の医療施設も見落としていたとか、やはりどうしてもマーケティングが甘い気がします。いや、これはファミリーサポートセンターの人たちを非難してるんじゃないですよ。システムのデザインが、現状では今ひとつ上手く動作しないものなのではないかということです。

 それではどうしたら良いのか? そこのところは、もう少し調査を進めてからまた改めて考えてみるとして、とりあえず多摩川のこちら側の皆さんに情報提供でした。