風の広場

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 昨日は多摩ニュータウンの長峰地区を息子と二人で散歩しました。

 長峰地区は多摩ニュータウンの東端(向陽台)から数えて二つめの街です。向陽台とは稲城中央公園を挟んで隣接しており、東から数えて三つめの街である若葉台には上谷戸親水公園(かさやとしんすいこうえん)を挟んで隣り合っています。

 鉄道の駅や商業施設が無い、つまり家と保育園と小学校しかないという上級者向けの街ではあるのですが、上谷戸川の左岸丘陵の高低差をダイナミックに生かした空間設計は、多摩ニュータウンの数ある街の中でも屈指の美しさと魅力を持っているというのが私の感想ですね。実は多摩ニュータウンというのは基本的に北西向きの斜面に造られた街が多く、南東向き斜面にあるのは稲城市内の3地区(向陽台、長峰、若葉台)だけなのですが、中でも街の美しさという点では向陽台と長峰が抜けていると思います。

 いま、私は「長峰と向陽台は美しい」と書きました。ニュータウンが美しい? そうなんです。私はわりと物事の美醜には敏感な方ですし、世界で美しいとされる街も沢山歩いてきました。アッシジ、ヴェネチア、フィレンツェ、モンタルチーノ、パリ、ディジョン、ベルン、トレド、セビージャ、グラナダ、バルセロナ・・・・。

 それらの街と較べてどうか? そりゃあ敵は最低でも150年200年、ものによっては1000年2000年の歴史がありますから、風格という点では勝負にならない。でも、空間設計の方向性としては間違っていないだろこれはという手応えはビンビン感じる。多摩ニュータウン学会では、100年後に多摩ニュータウンを世界遺産にしようという話が真剣に話し合われていますけれども、このまま丁寧に街を育てていけばそれは現実的な目標になると思います。玉川上水と多摩ニュータウンは多摩・武蔵野地域が世界に誇る文化遺産ですよ。気づいていない人ばっかりですけど。

 話を戻しましょう。長峰。長峰の最大の魅力は、向陽台や若葉台よりも急峻な斜面を生かした「縦の空間」だと思います。昨日遊びに行った「風の広場」も、もともとあった斜面を大胆に利用した広大な草山を中心に置き、周辺に滑り台やブランコ、ジャングルジムを散らばす設計でしたし、街の中央の通りから谷側を眺めると、集合住宅内に設けられた通路や遊歩道を通して緑につつまれた多摩丘陵の尾根や駒沢女子大キャンパスが、まさに写真のタテ位置フレームのように目に飛び込んできます。それこそイタリアやスペインの山岳都市のような空間です。シエナとかね。

 商業施設が一切存在しないことで、街の外から入り込んでくる人間が基本的に居ないというところも、美観という点では有利に働いていて、これは私も驚いたんですけれど、通りに落ちているゴミが本当に少ないんです。

 長峰、難しいけど良い街です。自家用車を持っていなくても生活できる都市インフラ(特に、けが人、老人、病人、身体障害者、育児中の親などが労せず買い物出来るような仕組み)を追加出来れば、多摩ニュータウンの隠れ里として独自の地位を築けるんじゃないか。そう思います。