日本ファンタジーノベル大賞2021決定発表号を読んで倒れそうになった。

恩田陸の発言にびっくり

小説新潮を確認。

日本ファンタジーノベル大賞2021決定発表号。

選評でいきなり恩田陸がファンタジーは手段であって目的ではないと言い切っていてずっこけた。

ファンタジー小説好きがファンタジー小説を書き、読むのはファンタジーが目的なんだよ!

ミステリー小説ファンはミステリーが目的で買うんだろ。ファンタジーも同じじゃ!

あの世でル・グウィン先生が激怒してるぞ。

ファンタジーが目的じゃないなら新潮新人賞長編部門にしろ。

ちなみに私、見間違いかと思って最初は調布パルコのリブロで1冊だけあった小説新潮見たんだけど、調布トリエのくまざわ書店まで杖ついて歩いていって見直しましたもん。「え、俺見間違いしてる? ファンタジーは目的じゃないって恩田陸言った?」って。

言ってました。まあびっくり。藍銅ツバメの「鯉姫婚姻譚」だけがファンタジーを手段にして恋愛ものを書けていたから大賞に推したと言ってたけど、なら別に国際結婚とかのプロットでええやんけ。アホかいな。

恩田陸以外の選評ですが、森見登美彦はファンタジーは何か論には踏み込まずに作品の作りについてのクールな分析を展開していました。

でも個人的なハイライトはヤマザキマリ氏の「(最終選考に上がった作品の)主人公がみんな似たような陰キャばかり」(要約)という指摘。

さて、気を取り直して、最終で落とされた諸作品。選評を読む限りどれもあと少し手を入れればエンタメ作品として充分売り物になりそうなものばかり。なんとか世に出て欲しいです。あと、桧口りょう氏がカクヨムに最近出したのはあらすじから判断して別作品ですね。堀井拓馬氏の作品も絶対読みたいです。これだけ作者の思い入れがあるんだから、弱点はあっても長所もあるに違いない。出たら絶対買うよ。

 

で、大賞受賞作品の藍銅ツバメ「鯉姫婚姻譚」。

受賞発表前からゲンロンSF講座関係者がツイッターではしゃいでたんで、ああこれはまたゲンロン出身のあの人に行ったなと思ってたけど、もちろん実力無しのコネで勝ったわけでないことは確か。文章は直すところが無いくらい上手い。藍銅ツバメ氏、プロ作家としてやっていける人だと思います。内容は日本昔話の異種婚姻譚を陰キャのあんちゃんが淡水人魚に幾つも語るという話。まあ純文学ですね。過去受賞作品なら「桃月夜」に似てますかね。

とはいえ、これをファンタジー小説として売るのは誰も得しないと思いますが。

というわけで日本ファンタジーノベル大賞、応募者にとっては最終で恩田陸にカテエラにされかねないし、勝った人もファンタジーノベルというブランドより純文学の大型新人登場! で売ってあげた方が売り場でのカテエラ回避出来るしで、やはり新潮新人賞長編部門に看板変えるべきというのが私の結論。いくらゲンロン関係無いですと言ったところで、新潮社の文芸第二部元編集長がゲスト講師で出入りしていて、主宰者はファンタジーノベル大賞立ち上げ時代の編集者。そこの道場生が4回のうち2回の一等賞を手に入れるってのは、なかなかに興味深い現象です。市場がそれをどう見るか、ですからね問題は。

ゲンロン講師がさっそく有料配信で藍銅さんを読んで「お役立ち情報」を語る。

ゲンロン講座OBの方のツイート。やっぱりコツがあるのかな。

 

ブランドマネジメントとしてはかなりマズい。売上の数字として毎年5万部くらいはコンスタントに売って、受賞者も順調に次の長編を出してという形で結果が出ているならともかく、現実にはそうなっていないですし。つまり、現状は市場からそっぽを向かれているし人材育成としても失敗している。

あるいはストレートにゲンロンの協賛をつけて新潮社ゲンロンSF大賞とでもしたらどうか。ゲンロンSF講座受講者は一次審査免除でいきなり二次選考から入れるようにして。21万円と消費税を払って下読み迂回出来るならみんな払うでしょう。カテエラ応募爆死も無くなるし、経済も回るし。WIN-WINです。ファンタジーは目的じゃないって公言する人が審査員やってる「日本ファンタジーノベル大賞」はもう良いです。Fed up with it!

そして私は新潮社ではなく角川の売上に2610円貢献して帰宅。

息子に頼まれたノーゲーム・ノーライフ11巻とソードアート・オンライン23−25巻。

 

私が読むわけではない。でも、こっちのがファンタジーノベル大賞よりは遥かにファンタジーへの敬意や愛情や熱狂をもって作られていると私は思うから、こっちにカネを払うよ。

看板だけファンタジーじゃなくて、本当に朝から晩までファンタジーのことばかり考えているファンタジー馬鹿ばっかりが集まる祭典、あると良いんだけどなあ。純文学やSFを書きたい人・出したい人が「でもしか」でやるやつじゃなくてさ。


11/27追記

世界観設定の重要さについてはこちらの連ツイにまとめてあります。

 

 

 

 

 


【特別付録:あなたのファンタジー小説をどの公募に送るべきか】

チェックポイント1:「あなたのファンタジー小説は中華後宮もの、あるいは異世界恋愛ものですか?」

YES→集英社のノベル大賞に出しましょう

NO↓

チェックポイント2:「あなたのファンタジー小説はライトノベルあるいはキャラクター小説ですか?」

YES→KADOKAWAで合いそうな公募を探してください。

NO↓

チェックポイント3:「あなたのファンタジー小説は児童文庫で出せる可能性は無いですか?」

ある→講談社青い鳥文庫小説賞角川つばさ文庫小説賞ポプラズッコケ文学新人賞をおすすめします

ない↓

チェックポイント4:「あなたのファンタジー小説は一般文芸として売れるのではないですか?」

そうかもしれない→ポプラ社小説新人賞

一般文芸としては癖が強すぎるので無理かな↓

ああ、とうとう来てしまいましたね。それでは日本ファンタジーノベル大賞に挑戦するための準備を始めましょう。

以下のチェックリストを全てクリアするのが条件です。

  1. 主人公は家族関係をこじらせた陰キャに設定しましたね? 陽キャは死亡フラグです。
  2. 物語の舞台は中国・中華風か日本・日本風か19-20世紀のヨーロッパに設定しましたね? ヨーロッパ風異世界は死亡フラグです。
  3. ゲンロンSF創作講座で公開されている作品を20作品以上読みましたね? ゲンロン講座を受講するか、ゲンロン講座生になりきるのが勝利への近道です。
  4. ファンタジーノベル大賞を取っても2冊めを出してもらえない覚悟はありますね? 柿村将彦、大塚已愛、高丘哲次、岸本惟の4人とも2021年11月26日時点で新潮社からは受賞作しか出してもらってません。新潮ミステリー大賞を2018年に取った結城真一郎はもう3冊出てますけど。Are you OK?

以上をクリアしたら、GO! 健闘を祈ります。

2022年11月3日追記

2022年の最終選考には見た限りではゲンロン勢はいなかったです。

去年は電話で編集部にゲンロン優遇してるのかって問い合わせた人すらいたらしく、さすがにやりすぎたと思われたんですかね?

一方、再開後の受賞者2冊め出ない飼い殺し問題は継続中です。