川越宗一『熱源』
読了。
誰が主人公だかよくわからないのと、場面転換が細かくてポンポン時空ジャンプするのと、さほど必要とも思えないような実在有名人の一瞬だけ登場演出の多さと。
悪い意味ではなくこれは最近の漫画の演出を取り込んでいるのではないか。あるいは(あんまり見ないですけど)テレビの連続ドラマとか。
1シーンがすごく短いんですよ『熱源』。映像的に一番フックが効くところだけを細かく切り出して繋いでいくような書き方。あと後半は息切れしたんだかなんだか、描写も雑で短くなっているように感じます。
アイヌの人たちには私も(彼・彼女らの民族運動の場で)直接関わったことがあるし、エカシと忌憚ない議論を交わしたこともあるので、決して知らない世界ではない。マイノリティとかエスニシティは元より專門分野ですが、研究者視点で見れば『熱源』の描写は極めて浅く、軽い(良い悪いではなく)。
最初はこれが全方位から絶賛の直木賞? と困惑したんですが、直木賞の小説を読むような層の中心はマイノリティ研究の最前線の思考をじっくり読んで悶絶したいわけじゃないですから、美味しいシーンだけジェットカットで繋いだこういう小説で良いんですよね。司馬遼太郎を令和風にジェットカット1.25倍速再生でやったみたいな。この発想は無かった。
NHKの大河ドラマの2時間総集編みたいな小説でした。むしろこれを原作に大河ドラマ作ったらしっくりくるんじゃないかな。