ちょっと面白そうな企画展が各所で開催されているので紹介します。
まずはご存じ国立科学博物館。特大の航海カヌーの模型があるんで有名なとこですな。
ここは「縄文VS弥生」と銘打って、日本列島の先史時代の二つの文化を対比させた企画展を行っています。8/31まで。
ちなみに北山耕平さんは、こういった二項対立の構図を厳しく批判しておられますが、
「国家による陰謀」という解釈はちょっと穿ちすぎなんじゃないかと思いますね。たしかに西尾幹二の『国民の歴史』は、(日本列島に日本という国家が存在しなかった時代である)縄文文化を日本文化の原点として捉えて、彼らが嫌いな中国や朝鮮半島由来の文化である(と彼らが思いこんでいる)弥生文化の影響を極力少なく見積もろうと頑張っていますが、そういった偏狭な政治的意図を国立科学博物館という組織の運営にダイレクトに反映させられるような制度は無いんじゃないでしょうか。
ちなみに、国立科学博物館の新館地下2階、航海カヌー模型を含めた人類の拡散という大展示を仕切られた海部陽介さんは、近著『人類がたどってきた道』(これはこれで近々紹介しようと思っています。良い本です)のプロローグで、人種主義者とその主張を自然科学的な論拠を示しつつ徹底的に批判しておられます。その舌鋒の鋭さは爽快です。
こういった骨のある研究者がいて、そのような研究者に大きな常設展示の企画を任せる程度の健全性が国立科学博物館にはあるわけですから、北山さんが言うほどに政治的に偏った意図を持つ企画展とは思えませんね。何にせよ、実際に展示を見てみないと。
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川崎市市民ミュージアムでは、「ロシア民族学博物館アイヌ資料展 -ロシアが見た島国の人びと- 」という企画展。8/28まで。
先日私は網走にある北方民族博物館という所に行ってきましたが、アイヌを含む環太平洋地域北部の人々の生活文化、結構面白いですよ。ハワイのハヴァイロア号に材木を提供したクリンギットやハイダも、この人々の中に含まれますね。ホクレア号の日本航海では、白老においてアイヌの人々との交流も予定されているようですし、日本列島に住む私たちが、アイヌのことをあまり知らないというのもちょっと格好悪いので、近所の方は是非、見に行ってみてください(網走も川崎も)。
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葉山にある神奈川県立近代美術館では「アンテスとカチーナ人形」と銘打って、ドイツの現代アートと北米先住民ホピ族の人形の関わりを取り上げています。
これはあまり航海カヌーとは関係無いんですが、ちょっと面白そうなのでついでにご紹介しました。
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画像は北方民族博物館のポストカード。上からアルゴンキン、イヌイット、トリンギットのカヌー。