2016年の草船の失敗の後はどうなったのか全然気にしていなかったのだけれど、最終的には「3万年前(の本州島と九州島)に存在した局部磨製石斧なら丸木舟が作れることがわかったので、3万年前にも丸木舟は作れた」というロジックで、丸木舟を使うことになったようです。
一応、軽くチェックしてはみたんだけれど、少なくとも先島諸島からは局部磨製石斧は出土していないので、2016-17年の時点で海部陽介が丸木舟を使わない理由として挙げていた(例えば東洋経済オンラインの2017/04/04付のインタビュー)「台湾や沖縄の古い遺跡からは石斧は出ていない」というロジックは、廃棄されたってことですよね。
成毛:石器は残っても、木工具みたいなものは新しいものでないと残りませんものね。
海部:当時はもちろん、他の地から持ってはこられないので、おのずと現地で調達できる植物で作ったと考えられます。
成毛:丸木舟とか、竹筏(てっぱい)の可能性はありませんか。
海部:丸木舟を作るには、大木を伐採してくりぬく必要があります。そのためにはおのが必要ですが、今のところ台湾や沖縄の古い遺跡からはそういったものが見つかっていません。その点では筏はありえますが、ただ、草舟ほどスピードが出ないので、黒潮を乗り越えることはまずできないと思います。
草船のときは(草船作りのボランティアで与那国に通った友人のKくん/彼は航海クルーからは外された/によると)沖に出る以前に物理的に絶対これは黒潮を越えるのは無理だとわかっちゃってたのを、せっかくだからと(相当高度な石斧が無いと成型出来ないような木製パドルを使って)漕ぎ出していった、それはまあそれで記念としては悪くない挑戦だったでしょう。クラウドファンディングで大金を集めたのに、沖に出る前に無理だってわかっちゃったからやりません、では、納得してもらえない。
ただ、草船のときのロジックと今回の丸木舟のロジックが不連続であることは、明確に語ってしまった方が良いと思いますよ。
サイエンスとしてやっているのであれば。
「草船は、考古学的に、3万年前の台湾や与那国島に存在したことが間違い無い素材と道具だけで作りました。しかしそれではどうしても上手く行かなかったので、道具に関しては条件を緩めて本州島や九州島にあったものも使って良いことにしています」
そういえばパドルはどうしてるんでしょうか? 局部磨製石斧で伐採・成型したパドルですか? この画像を見ると、縄文時代のテクノロジーなら近いものは作れたでしょうけれども、局部磨製石斧で製作されたものかちょっとわからない。その辺も論文なり報告書なりで明らかにされるとは思いますけれども。
ともかく御安航をお祈り致します。