Last Train Home

 昨日、私は大急ぎでマウ老師への手紙をしたためたのですが、その際に、「実はタウマコ島の伝統航海士があなたに会いたがっている」とも書き添えておきました。そして、その旨をミミ・ジョージ博士にも書き送りました。

 ミミ・ジョージ博士からのメールはすぐに返って来ました。あんまり良い内容ではありませんが。

 ミミ・ジョージ博士は先日、ベン・フィニー博士と連れだって既にマウ老師に会われたのだそうです。その際、タウマコ島の伝統航海士がマウ老師と会ってお互いの知識を付き合わせてみたいと考えているという話もされたのだとか。マウ老師もこれには興味を持っておられるのだそうですが、問題があります。なんでも、マウ老師は最近、体調を崩されているのだそうです。一方、タウマコのテヴァイア老師も既に齢96歳。

「我々にはもうあまり時間が残されていない」(ミミ・ジョージ博士)

 何が必要かといえば、もちろんマウ老師が健康を回復されることが第一ですが、テヴァイア老師がマウ老師に会いに行く費用さえも思うようにならないのだとか。ミミ・ジョージ博士とテヴァイア老師は最終的にはソロモン諸島のラタに航海術学校を開き、またタウマコの伝統的な航海カヌー建造術を映像資料に残して後世に伝えることを目指しておられるのだそうですが、それを全部やろうとしたら2200万円くらいかかると。177000USドル。

 それで、ミミ・ジョージ博士はナイノアさんにも会われて、PVSが将来作るつもりの航海術学校で、ソロモン諸島の人々が辛うじて保持している、より古代のものに近い航海術やカヌー建造術をも学べるようにしてはどうかとも提案されたのだそうです。

 まあ、2200万円はネットであぶく銭を稼ぐデイトレーダーでもない限りは出ませんけれども、せめて何か我々にも手伝えることがあったら協力すると返事をしておきました。例えばフルサイズの航海カヌーではなくて、もっと小さくて軽くて安い民芸品をタウマコから日本に卸してみてはどうかとか。そもそもあなたのプロジェクトは寄付金の送り方もよくわからないではないかと。アメリカ国内なら小切手が発達していますから、小切手を送っちゃえば済むんでしょうけどね。

 私はナイノアさんやハワイの航海カヌー乗りの方々が掲げるビジョンへの共感もあって、こういったウェブログを書き続けているわけですけれども、決してそれだけに興味があるのではなく、ミミ・ジョージ博士が取り組んでおられるような事業も、出来るだけ応援していきたいと思っています。タウマコ島とサタワル島。何度も書きますが、タウマコ島はポリネシア航海協会が最初にスカウトしようとした伝統航海士の島であり、サタワル島はリモート・オセアニアの航海カヌー文化復興運動の導火線に最終的に火を付けた伝統航海士の島です。その二つの島の、おそらくは近代化以前に伝統航海士として育てられた最後の世代の伝統航海士たちが、お互いに会ってみたいと思っている。

 それだけではありません。現在の考古学の知見から考えて、カロリン諸島とポリネシアの航海術は、おそらくは同じルーツから枝分かれしていったものだと思われますけれども、ミミ・ジョージ博士は、テヴァイア老師とマウ老師が会って話をすることが、その共通のルーツを復元する最後のチャンスだと考えておられます。おそらくは2000年も現在から遡るような古代の知識です。

 応援したいですよ、そりゃあ。そうでしょ。

しかし、時間はあまり残されていない。

 何とかならないものか。