夜空にホクレアを捜してみよう

 ある晩、奄美の民宿で夕食をとっていた私たちは、「奄美の星空を見てみたいよね」と話し合っておりました。すると、我々の隣のテーブルで焼酎を飲んでいた民宿のおやじさんが、「星ならあそこが良く見える」と、ある峠を教えてくれました。峠といっても、古仁屋の集落から県道沿いに少し東へ走った所で、車で行けば5分くらいの場所です。

 さて。早速その展望台に出向いた私たち。車を止め、ライトを消して外に出ます。小さなマグライトを頼りに階段を上り、マグライトも消す。暗闇に目が慣れてくると、私たちの上には、一面の星空が広がっておりました。

 北極星を捜します。北斗七星は北の空にはっきりと出ていましたが、カシオペアは地平線の下でもう見えません。北極星もかなり低い位置にありました。北半球では南に行けば行くほど北極星の位置は下がって行きます。

 それではホクレアを捜してみましょうか。北斗七星のひしゃくの柄の部分から、柄のカーブに沿って視線を移動させていきます。最初に出くわす、やたら明るい、赤みがかった星。それがホクレア。深夜の1時くらいに一番高い所(真南)に昇ります。

 真南? ハワイは奄美の真南にあるんでしょうか? そんなバカな。

 もちろん違いますね。ハワイと奄美は東西にも数千キロ離れています。

 でも、タヒチからハワイに行くときにはホクレアが目印になるわけでしょ。

 もちろんなります。

 どういうことか。要するに、タヒチから見て、ホクレアは北の方角にある最も明るい星であり、なおかつ、タヒチからハワイに船で近づいていくにつれ、ホクレアの北中する(キタナカするではなくホクチュウすると読んで欲しいです)高さは高くなっていく。船がハワイに辿り着いた夜に天頂を見上げると、そこにはホクレアが輝いているという寸法です。これは、タヒチとハワイが東西方向には殆どズレていないことから可能になるお話であって、例えばサモアからホクレアを目印に北上しても、ハワイと同緯度の海域に出るだけで、そこにマウナケア山はありません。石垣島だって天頂をホクレアが通過する島です。

 面白いですね。もしも最初にハワイを見つけたポリネシア人が、ホクレアを目指して航海をしていたのだとしたら、彼がハワイにたどり着けたのは、たまたまタヒチとハワイが南北で殆ど同じ経度にあったからかもしれません。

 ちなみに、ポリネシアの創世神話は星々と島々の関わりを次のように語っています。

 「かつて大地の女神と天空の神はお互いに愛し合うあまり、常に寄り添っていた。
彼らの子ども達は天と地の間が狭すぎることに悩み、二人の間を引き離そうとして力を合わせ、ついに天と地の間に空間を作り出した。子ども達はそうして創り出した空間に、星々をぶら下げていった。最も明るい星(シリウス)をタヒチの上に、青白く燃える星(スピカ)をサモアの上に。ハワイの上には赤く燃える星(アルクツルス)を置いたのだった。」

 パソコンソフトで試してみたら、本当にアルクツルスはハワイの天頂を通るし、シリウスはタヒチの天頂を通る。スピカなんかジャストミートでサモアの真上を通過していくんですよ。みなさんも試してみては?

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