ユネスコ・LINKSのCD-ROM

 ユネスコの「Local and Indigenous Knowledge System(地域の知・先住民の知)」部門が製作した、航海カヌー文化に関するCD-ROMがひっそりと発表されました。

http://portal.unesco.org/sc_nat/ev.php?URL_ID=4845&URL_DO=DO_TOPIC&URL_SECTION=201&reload=1133953260

 タイトルは「The Canoe is The People」。おそらくマウ老師の「航海することを止めたらサタワルの人々はサタワルの人々である理由を失う」という言葉がもとになっているんでしょう。

 登場するのはマウ老師の他、故レッパン師、クック諸島のサー・トマス・デイヴィス(「テ・アウ・オ・トンガ」「アオテアロア・ワン」をデザインした他、伴走船を付けない遠洋航海にも積極的に挑戦している人物。ただしテ・アウ・オ・トンガはもともと強力なディーゼル・エンジンを装備している)など。

 近代以降に行われた様々な航海カヌーの航海や、航海術が各地でどのように捉えられているかを焦点としたインタビューなどが収録されていますが、 個人的白眉は、マウ老師が語る「ミクロネシアの航海術のはじまり」。

http://portal.unesco.org/sc_nat/ev.php?URL_ID=3543&URL_DO=DO_TOPIC&URL_SECTION=201&reload=1128099564

 ミクロネシアでは、航海術はシギが教えてくれたことになっているのだそうです。ある時、人食いシギが島々を渡りながら人々を食い殺して回ったのですが、ある島の酋長が魔法の食べ物でシギを満腹にして、その代価として航海術を教えてもらったのだとか。

 面白いですね。先日紹介しましたが、ポリネシアのラタの伝説でも、航海カヌーの始まりには鳥が絡んでいるんですよ。思い出してください。ラタが手に入れた最初の航海カヌーには、舳先に鳥の姿が彫り込まれていたこと。鳥が目指す島に導いてくれるというまじないでしたよね。

 実はマイス号、マウ老師の為にカワイハエで建造されている新しい航海カヌーの舳先にも、鳥の姿があしらってあるのだそうです。一羽の鳥がラタに航海カヌーを贈与し、ミクロネシアの民に航海術を教えたように、マウ老師はハワイの人々に航海カヌーと航海術を贈与した恩人ですね。そして、その新しいカヌー、世界中の人々に航海術を教える為のカヌーの舳先には、やはり鳥の姿がある。

 航海カヌーを導くのは、常に鳥たちの姿なのかもしれません。