「南太平洋における伝統航海術から学ぶ日本の海洋ルネッサンス」

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第2回 東京海洋大学 海洋文化フォーラム

講師 海洋ジャーナリスト 内田正洋 氏
プロセーラー    西村一広 氏

 東京海洋大学では、平成18年度より「海洋文化フォーラム(Marine Culture Forum)」という学際横断的な定期セミナーを、年二回(6月と12月)企画することにいたしました。
 海洋文化学に関連した諸分野の専門研究者を本学にお招きして、多様な視点から海と人間との相互関係や海洋文化に関する諸問題を再考していく積極的な議論と意見交換の場としていきたいと考えております。海洋のグローバルな性格がゆえに、海洋文化研究における海洋科学・海洋工学の知見の必要性は論を待ちません。 
 第1回は、今年6月に品川キャンパスにおいて、「海と陸の間(はざま)で:渚の民俗学」と題して、大東文化大学 高桑守教授にご講演いただきました。
 
 今回は、南太平洋の伝統航海術に造詣が深く、日本の海洋文化ルネッサンスに熱い思いを持っておられる、海洋ジャーナリスト内田正洋氏(日本大学水産学科OB)と、プロセーラー西村一広氏(東京商船大学航海学科OB)に、「南太平洋における伝統航海術から学ぶ日本の海洋ルネッサンス」と題して、ご講演いただきます。      

 海洋学あるいは航海学の研究者はもとより、本学の教職員の皆様、学生諸君および一般学外者の御参加も歓迎いたします。
 多くの皆様の御参加をお待ちしております。

●日時:平成18年12月13日(水)午後6時30分~8時(参加費無料、申込不要)
●場所:東京海洋大学 越中島キャンパス 第4実験棟5階 大教室
(東京都江東区越中島2-1-6)

●問合せ先:
東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科海洋環境保全学専攻、海洋人類学研究室[岩淵聡文教授]
(電話:03‐5245‐7715;FAX: 03‐5245‐7339
iwabuchi@kaiyodai.ac.jp)

又は、海洋スポーツ健康科学教室[田村祐司助教授](電話・ FAX:03‐5463‐4275
tamura@s.kaiyodai.ac.jp)

「南太平洋における伝統航海術から学ぶ日本の海洋ルネッサンス」

■講演要旨
 太平洋に浮かぶ島々では、古代から帆走カヌーによる遠洋航海が盛んでした。風と海流だけを動力に何千キロもの旅を続けるのですが、当時はまだコンパスなど近代的な航海計器は存在しませんでした。航海士は星の位置や波・風の変化を読み取りながら航路を割り出す「スターナビゲーション」なる伝統航海術を使い、船を操っていたと伝えられています。ハワイに最初に移り住んだのも、そんなカヌーを使ってポリネシアから渡ってきた人々でした。ハワイの島々にポリネシア文化は定着しましたが、やがて18世紀後半に西洋文明の波が押し寄せ、古来の文化習慣とともにカヌーによる航海も近代化の影響を受けることになりました。しかし、1970年代に入ると、ポリネシアをルーツに持つ伝統文化をもう一度見直すことでハワイ人の誇りを取り戻そうという運動が高まります。

 こうした流れの中で、祖先がいかにして海を渡って来たのかを学術的に検証するために1975年に造られたのが「ホクレア号(幸せの星の意)」です。しかし、残念なことにホクレア号が完成した時、伝統航海術を継承している人物がハワイにはすでに存在しませんでした。その時、先住ハワイ人の血を受け継ぐナイノア・トンプソン氏が、この伝統航海術の希少な継承者であるミクロネシアの航海士に師事し、失われつつあった航海術を習得し、タヒチ~ハワイ間をはじめ、様々な遠洋航海を成功させます。こうした航海の成功は、ハワイの人々に民族としての誇りを呼び起こさせるきっかけとなりました。ホクレア号は、現在までに地球の4周分の距離を旅してきました。当初の伝統航海術を検証する目的を終えた今、次世代の若者に伝統航海術を有していた海洋民族としての誇りを伝えるための教育の場としての役割を担っています。さらに、今後は各国へ航海し、お互いの文化を尊重し合いながら文化交流「アロハ・スピリット(友愛の心)」をはかるという活動も予定されています。

 その友好航海の一貫として、来年2007年1月に、ホクレア号はハワイを出発し、ミクロネシアを経由して、2007年4月から5月にかけて、日本の各地(那覇→長崎→山口→愛媛→横浜)を訪れるプロジェクトがスタートします。今回は、そのプロジェクトの日本側の中心メンバーのお二人に、「ホクレア号」日本航海の意義と日本における海洋文化の現状および今後の展望について語っていただく予定です。
 
 なお、ナイノア・トンプソン氏は今年9月に福岡市で開かれた福岡県・ハワイ州姉妹提携25周年記念事業「ハワイ文化セミナー」で来日の折、東京での記者会見の後、品川キャンパス南の天王洲運河および高浜運河をアウトリガーカヌーで1時間程度、爽快に漕がれました。