キャプテンに訊け!

 イングランドの至宝、プレミアリーグとニューカッスル・ユナイテッドの通算ゴール記録保持者、キャプテンの中のキャプテン、生ける伝説、アラン・シアラー選手が今度こそユニフォームを脱ぐことになりました。

 テスティモニアル(testimonial、功労顕彰)・マッチはグラスゴー・セルティックをセント・ジェームス・パークに迎え、5月11日に行われるそうです。通例、テスティモニアル・マッチの収益は全てテスティモニアルをやってもらう選手のものになるのですが、シアラー選手はこの試合をチャリティマッチとして開催する希望を持っており、100万ポンドのチャリティを目指すのだそうです。

 100万ポンド。今のレートだと2億2000万円くらい。さすがはシアラー選手というしかありません。押しも押されもしない千両役者の面目躍如ですね。ニューカッスル・ユナイテッド、グラスゴー・セルティックという、いずれも世界有数の人気チームが、アラン・シアラーという大看板を立てて行う興行であればこそでしょう。もしかしたらロイ・キーン選手や中村俊輔選手も出るのかもしれませんね。

 一方、例のマウ・カヌーはあと500万円くらいあれば完成だって話で資金集めを続けているそうです。こちらはまさにマウ・ピアイルック老師のテスティモニアル・カヌーですわね。シアラー選手のテスティモニアルからそういう話に繋げると、なんだかあまりの桁の違いに愕然としますけれども、これはそもそも 基盤としている社会の規模が桁違いなんで、しょうがないです。

 さて、そのマウ・ピアイルック・テスティモニアル・カヌーに日本からも浄財をという記事を少し前に出しました。

cocolog:@nifty

 その中で私は、多分「ミクロネシアの人々が伝統航海術を学ぶ為の道具」という文脈から言えば、私みたいなある意味で部外者的な人間も、寄付金を出しちゃって良いんじゃないかという風に論じました。

 ただ、今ひとつその辺自信が無かったので、マカリイ号のキャプテン・チャド・パイションさんに、再びメールを出しておりました。「本当に私らが寄付金出しちゃってオッケーですか?」と。

 これに対するキャプテンのお返事はこうでした。

「もしも貴方が、心からマウ先生の為のカヌー作りを助けたいというのなら、それは素晴らしいことです。このカヌー作りを助けてくれている人々は、必ずしも船乗りやサーファー、パドラー、ハワイ人だけではありません。むしろそういった方々は少数派でしょう。とにかく、何か自分とカヌーの間に縁を感じている人々が、カヌー作りを援助してくれているのです。おそらく、あなたもそういった人間の一人なのだと思います。このカヌーは、これまでカヌーから様々なものを学び、それを他の誰かに伝えようとしている人々、そして、今後カヌーから何かを学びたいと思っている人々の全てに開かれています。」(意訳)

 私には、キャプテンの言葉の一つ一つが慈雨のように感じられました。

 航海カヌーに興味を持ったなら、まず海へ行け、サーフィンをやれ、カヌーに乗れという意見もあるでしょう。それはそれで一つの立派な思想だと思います。

 が、もう私は迷いません。私はそういう思想とは別の道を行きます。だって、アラン・シアラー選手の為にセント・ジェームス・パークに駆けつける人々の全てがフットボーラーなわけないもん。パブでビールを飲みながら我らがマグパイズの戦いっぷりを観戦しているだけのおっちゃんだっていっぱいいるさ。そんなおっちゃんたちが居なかったら、いくら天下のアラン・シアラーだって、一晩で2億円は集められないっしょ。

 また、スペインはマドリッド在住の友人が、ある時、こんなことを言っていました。スペインではサッカーは文化なんだと思うと。それだけではちっとも意味がわからんかったので、詳しく説明させてみたところ、要するに、サッカーに関わる人々は、社会そのものにとって大事なことをしている人々と考えられていて、自らはサッカーをしない多くの人々の尊敬と援助を受けて活動しているということでした。

 航海カヌーもそういうものでしょう。私は自分では航海カヌーに乗らないしそれに隣接するマリンスポーツもしない。生活のありようとして出来ない。私には私が支えなければいけない家族がいて、それとマリンスポーツは現状では物理的に両立しない。そして私の第一の使命は家族の健康を守ること。これは絶対に譲れない。

 でも、私は航海カヌーを人類社会にとって大事なものだと思うから、それに関わっている人たちに、自分の稼ぎの中からお金を寄付する。そういうことです。

 念のため、寄付金の送付先を、もう一度ご紹介しておきます。みなさんもマウ・ピアイルック・テスティモニアル・カヌーの趣旨に賛同されましたら、是非、寄付金を。

Na Kalai Waa(これが宛先)
P.O. Box 748 Kamuela, HI. 96743(これが住所)
※ This is to be used for Mau’s Canoeと明記した紙を必ず同封のこと。
※ 国際現金書留料金は10万円まで一律1000円だそうです。