「カマ・ク・ラ」のお値段は

 ホクアラカイ号のお値段がわかったので、かねてから噂だけはある「カマ・ク・ラ」号が相模湾に浮かぶ為にはどれだけのお金が必要なのか、そこから想像してみました。

 船体はホクアラカイ号と同じものを使う。それで32万2000ドル(この中に付加価値税が入っているのかどうかは謎ですが)。本来なら日本で建造するのが理想なのかもしれませんが、マカリイ・プロジェクトやPVSから技術供与を受けられると仮定しても、やはり出来合いのものを購入した方が費用の面で有利でしょう。

 とりあえずハワイで完成品に仕上げて貰って、貨物船で葉山まで持ってきてもらうことにします(回航する場合は伴走船も付けなければいけないし、いきなりハワイから日本まで航海カヌーを動かせる日本人クルーが12人いるかどうかも疑問大)。

 船そのものを最大限安く見積もって4000万円としましょうか。輸送費は難しい所です。船体長からして20フィートや40フィートのコンテナに入らないので、特別な見積もりが必要になりそうですね。まあ20フィートコンテナの5倍で5000ドルくらいとしましょう。60万円。

 次に船の保管場所を確保しないといけません。湘南エリアは日本一そういう料金がお高い所なので、58×18フィートの航海カヌーともなると、年額で100万円くらいは必要ではないでしょうか。

 他に登録費とか保険とか船検とかありますが、これはまあさほどのもんでもない。イニシャルコストを4200万円とします。これで「カマ・ク・ラ」が相模湾に浮かびました。

 次にランニングコストです。保管費用や保険、船検費用は黙っていてものしかかってきます。これを年間で120万円と見積もりましょう。次にメンテナンス費用。いくら船体がFRPでメンテは簡単と言っても、索や帆はメンテフリーじゃないです。船外機も使いますしね。これを年間で30万くらいに見ましょう。ただし重整備は出来ませんねこの金額では。

 ということで、「カマ・ク・ラ」計画を勝手に見積もってみると、イニシャル4200万、以降は毎年150万円が最低限必要で、もちろん実際に船を動かせば動かすだけ様々な雑費が降り積もって来ますから、どうでしょうね、毎年200万円?

 それではこのお金をどっから調達すれば良いのか。4200万円をポンと出せるお金持ちが居れば最高なのですが、仮に全部を寄付金でやるとなると、一口1万円でも4200人だな。さらにランニングコストを捻出する為には、例えば年会費5000円くらいの後援会でも400人を確保しないといかん。しかも船は湘南にありますから、湘南エリアとその周辺でこれだけの人々を集めて、グループを維持していかなければいけない。

 結構きついっすね。

 というのも、それだけのお金を集めるには、それなりの説得力が必要ですから。
 「これだけお金を出して貰えれば、これだけの事が出来ます。」というものを具体的に提示出来なければいけない。

 ポリネシア式の航海カヌーを手に入れて、それで何をやるのか?

 それはポリネシア式の航海カヌーでなければいけない必然性があるのか? そこらにある中古のクルーザーでは出来ないことなのか?

 それだけのお金を使う価値があることなのか?

 ハワイの航海カヌーはそれぞれビショップ博物館、カウアイ・コミュニティ・カレッジ(公立の短大)やブリガムヤング大学ハワイ校、ハワイ大学ヒロ校など、公的な機関が持っています。クック諸島の航海カヌーは国が持っているし、アオテアロアも大学が持っていたり、マオリの社会の支援があったりします。何故彼らがそれを持てるのかと言えば、航海カヌーは彼らのアイデンティティの象徴であり、他の船種では代替が利かない象徴性を備えているからです。航海カヌーである事に深い意味や必然性がある。

 果たして「カマ・ク・ラ」はそのような深い意味や必然性を持っているのか。持ちうるのか。それが厳しく問われることになるでしょう。