今日は本の紹介です。
小松正之『これから食えなくなる魚』幻冬舎新書、2007年
小松さんは水産庁の官僚であり、エール大・東大で学位を取られた研究者でもある方。というよりは、捕鯨推進派を代表する論客と言った方が良いでしょう。
しかしこの本は捕鯨とは関係ありません、あまり。この本が扱うのは日本の漁業問題です。一言で言えば、日本の漁業は危機に瀕している・・・・「一般企業ならばとっくに倒産している」・・・・というお話。
小松さんが指摘する日本の漁業の問題は三つです。一つは資源管理が殆ど出来ていないこと。日本の漁業者は「親の敵と魚は見つけた時に取れ」を合い言葉にして、とにかく後先考えずに獲れるだけ獲ってきたと。その結果、殆どありとあらゆる水産資源が枯渇または枯渇に近い状態に追い込まれていると論じます。そんなことをやっていたら次の世代が漁業を出来ないはずなのですが、それでも目先に魚が居れば獲ってしまう。
思い出しますねえ、沖家室の漁師さんたちが言っていた言葉。「もう魚が居なくなるから次の代は漁師では食えないよ。魚探で全部見つけて獲っちゃうんだもんな」。
もう一つの問題は、漁業関係の行政が硬直していて、例えば現時点で過剰になっている港湾施設に現在でも漁業関係の予算の3分の2がつぎ込まれている。一方で漁船団の更新など、日本と競合する漁業国が国家予算を入れてやっているような政策が行われていない。だから現在ではアメリカやアイスランドの遠洋漁船と日本の遠洋漁船では、設備の点で天と地ほどの差が付いてしまった。
そして私たち消費者の問題。マグロとかサケとかウナギとか、わかりやすい魚ばかり食べて、地の魚(アイナメとかイシモチとかベラとか)を食べなくなった。何でもかんでも刺身で食べたがるし、型が揃った魚ばかり欲しがるしで、必要以上に要求が細かいから、外国から魚を買い付けようとしても、そんなにうるさいことを言わない国に売られてしまう。世界の水産資源は既に奪い合い状態になっているので、そろそろ消費者も変わらないと魚が食えなくなりますよと。
ホクレアが来た時、私たちは日本の漁業の伝統を誇るべきものとして語りました。それは確かに誇るべきものでもあるのですが、実は色々な意味で崩壊寸前でもあるということが、この本を読むと解ります。