今出ている『AERA』に面白い記事がありました。
鞆の浦(とものうら)の伝統的な町並みを保存するためのNPOのお話。
鞆の浦とは広島県福山市にある古い古い港町です。万葉集にも出てくるくらい。瀬戸内海を往来する船の寄港地として栄え、現在でも非常に趣のある町並みが残っているらしいのです。そういった町並みに目がない私の友人が昨年ここを訪れて、興奮しながらその素晴らしさを語ってくれました。
さて、ここにかの坂本龍馬ゆかりの建物があったそうです。坂本龍馬が紀州徳川家を騙して大金をせしめた場所なんだとか。なんでも紀州徳川家の船と海援隊の船が接触して沈んだ際、自分の船にはこれだけの武器が積んであったのだから弁償しろと謀って、現在の貨幣価値で100億円くらいをむしり取ったらしいです。
最悪な男ですね。そのお金は紀州の人々の血税だというのに。オレオレ詐欺やヤミ金より悪辣だ。長生き出来なかったのもしょうがないか。
いや、まあ、そういう由緒ある建物があったのですが、これが売りに出された。お値段は1100万円。ところが買い手が付かないから、どんどん物件は荒れていく。福山市に「買い取れないか」と相談しても冷たくあしらわれるだけ*。
そこで立ち上がったのが、鞆の浦をフィールドにしている研究者たちと、お馴染みピース・ウィンズ・ジャパン。彼らの協力によって設立されたNPO「鞆まちづくり工房」が金策に走り回った結果、海外の団体から助成金10万ドル(=1100万円)を引っ張って来れたと。原資を出したのはアメリカン・エクスプレス社らしいです。偉いなあ。見直したぞアメリカ人。
この助成金を出したのは世界文化遺産財団という所だそうです。同時に「広島県と福山市の埋め立て・架橋計画により、町並みや水辺の歴史と文化が脅かされる」という理由で「崩壊や消失の危機にひんしている人類遺産」にも選定されたとか。
どうですか。日本人、まだ自分たちの手で自分たちの財産を葬り去ろうとしているみたいですよ。もったいない。あ~もったいない。私、愛国者としてこういったニュースを見ると心が痛みますです。
しかし、とりあえずその動きに抗した活動もある。
それでは私たちに出来る事は何か。とりあえず、見に行くことですよ鞆の浦を。見に行ってお金を使ってくる。いっぱい観光客が入れば、行政が鞆の浦を見る目も変わってくるでしょう。
こういった現象は、殆ど普遍的に世界中にあるものです。外部からの好奇心がもたらされる事で、始めて観光地は観光地となる。ゲストの観光行動によってホストが生まれると言います。だから、じゃんじゃん鞆の浦を見に行って褒め称えようじゃないですか。
「やあ、なんて素晴らしい町並みなんだ。こんな町並みを持っている福山市が羨ましいなあ!」
たぶん、まだ間に合います。万葉集の時代から江戸時代の北前船まで、日本の海の文化の核心の一つだった文化遺産です。ここで潰す手はないです。
* 逆に福山市はこの地域に国道のバイパスを通す為に、古い木造建築への維持修繕費補助を打ち切って兵糧責めを開始したそうです。なんだかなあ。まあ、福山市にも言い分はあるんでしょうが・・・・。