スローダウン戦略

 例の動画が流出したタイミングを狙いすましての各社の内閣支持率調査が行われて、またまた乱世の気配が煽られています。内田樹の指摘する通り、マスメディアは危機を煽った方が儲けが出るので、どんなネタでも世を乱す方向で語るわけですから、私としては「あ~またやってるよ」という感じ。

 動画については拓海広志さん山本一郎さんの論評が的確で、要は「もうちょっと外交をまともにやろうよ」「官僚組織にナメられすぎじゃないの? 末端の暴走リークとか確実に血祭りにあげていかないと内閣じゃなくて国が崩れちゃうよ」ってとこですね。せっかくCOP10を時間ギリギリでまとめたり、APACでもTPPの話を潰さない姿勢で好感度上げたりと、本来なら加点が付くこともやっているのに、もったいないです。

 それにしても、10年ほどまえに福野礼一郎さんが書いていた論評、今更ながら正しかったと思いますね。インターネットは人間の愚かな振るまいを加速させるだけだと。かつては流行って廃れるまでに数年かかったようなものが、今では数ヶ月、数週間、数日間で一気に盛り上がって、すぐに忘れられる。「ビットバレー」とか、今じゃ赤面するしかないネタでございましょう? 盛り上がりに向かうお祭り状態の中では、人々の振るまいはアホそのものになり、終わってしばらくしてから「何だったんだありゃ?」と反省するならマシな方で、おおかたは次の祭りへの参加に余念が無いと。

 例の平針の紛争だって、COP10の間は外部の活動家が自分たちのロビイストとしての存在感をアピールするために散々利用してましたが、今や完全に祭りの後状態ですからねえ。当事者たちはこれから何年も泥沼の紛争をやっていくんでしょうが、もはや外部からは見向きもされない。賞味期限切れ。ごちそうさんでした。

 これだけアホな振るまいの周期が短くなった今、賢い振るまいとは、個々の祭りに一切参加せず、本(読み捨て新書や流行りモノ系自己啓発本・・・勝間某とかの・・・・ではなく、じっくりと腰を据えて書かれた読み応えのあるもの)でも読みながら、最低でも半年とか1年、出来れば10年20年の単位で物事の価値を捉える視点を養うことなんじゃないかなーと思います。意識的にスローダウンする戦略ですね。目先の刺激にいちいち反応しない。流行りモノには手を出さない。流行りモノならば、せめて3年待って、新しさがハガレ落ちた後にスタンダードとして生き延びているものを選ぶ。