船は手作り

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 海王丸(2代目)を見学してきました。
 何と國枝船長じきじきの案内というVIP待遇でございます(1枚目)。わお。船長のクールなオヤジギャグもきっちりと堪能してまいりましたです。一緒に行った拓海さんが日本丸の訓練生だった時は、國枝船長は3等航海士だったそうで、昔からのおつきあいなんだそうです。

 2枚目の写真は機関室のメインコンソールの上にいたマー坊の人形。やはりお船ではポートサイド(左舷)が先(ヤン坊)で、スターボード(右舷)は次席なんですね。船長室はスターボード側でしたけど。海王丸は1500馬力のヤンマー製ディーゼルエンジン(スーパーチャージャー付き8気筒のはず、という國枝船長のコメント)を2基装備しているんだそうです。

 コンソール類(3枚目)は布谷舶用計器製造のもので、妙に新しい(銘板では2005年納入)のでおかしいなと思ったら、2004年10月の座礁事故の際に機関室は全部水に浸かってしまって、計器類一式もオシャカになったんだとか。

 4枚目の写真は食料庫の庫内温度を示す計器ですね。左からロビー(作業スペース)、野菜庫、肉類庫、魚介類庫の温度。全部違う数値です。それで、この画像の中に写っている機械類なんですけども、これ全部手作りですよ。手作り。私も昔、東芝の3次下請けでアルバイトしていたことがあるんでわかるんですが、こういう1点ものの機械って、当たり前だけれどもライン生産する意味無いでしょう。ライン生産ってのは数作った時に割安に出来るのがメリットなんだから。だからこういう機械は全部、職人さんが手作りした部品を職人さんが組んで仕上げるんです(私も500系新幹線のエアコンのインバータユニットとか作ってましたよ)。

 受注したのが布谷舶用計器でしょ。そうしたら、筐体は筐体屋さんに図面出して作ってもらうし、中身の電子部品や配線材は秋葉原や日本橋にあるような問屋から買う。メーター類もそうでしょう。サイズの合う汎用品を発注して、職人さんが手作業で取り付けるわけ。量産品じゃない機械なんて全部そうです。スペースシャトルもF1マシンもそう。だから、この海王丸の機械なんか皆さんの家にあるAV機器や携帯電話機と較べると、全然見栄えしませんね。機能と操作性のことしか考えずにデザインされてますからね。でも基本手作りだから、こんな温度計4つ板に並べて取り付けただけのものでも、それなりのお値段すると思いますよ。

 この海王丸という船、どこもかしこもこういう手作りの機械や部品で組み上げられていました。でも、それを言えば皆さんが通勤通学で乗っている電車の車両だって同じです。あれも基本手作り。ただね、そうやって手作りの機械を集めて来て組み上がった時の船全体から受ける印象は、電車の車両とは違うね。別物。どちらかと言えばホクレアに近い印象があります。それはやはり、商売の道具として使い倒されている電車の車両と、かけがえの無い船として大切に磨き込まれている海王丸やホクレアとの差ってことになると思います。組み上がったその瞬間は、きっとホクレアも海王丸も電車の車両も、さほど変わらないですよ。その後の扱われ方が違う。海王丸の真鍮部品とか、本当に鏡みたいにピカピカに磨き上げられてましたから。

 船から下りた時に拓海さんがおっしゃってたんですが、日本の船乗りでこういう練習帆船に乗れるのは商船乗りだけで、だから海上自衛隊も海上保安庁も嫉妬しているんだそうです。海王丸の向かいにはメキシコ海軍の練習帆船が居ましたが、日本の軍艦乗りやコーストガードはそういう、船乗りとして一番鍛えられる船に乗る経験が積めないんだと。

参考:海王丸のお値段 60億円
   F-15J戦闘機のお値段 1機で100億円前後