毎日新聞に妙な記事が載ってました。知床沖で捕鯨をしていたらホエールウォッチングの船がわざわざそれを見に近づいて行ったのだそうですが、これ、新聞記事にするような話なんでしょうか?
「知床沖の根室海峡で24日、和歌山県太地町と北海道網走市の捕鯨会社が共同操業する小型沿岸捕鯨船(32トン、7人乗り組み)が、クジラ・ウオッチング船の前でツチクジラを捕獲した。現場は禁漁区域でなく、捕鯨船はクジラを追っていて偶然、この海域に来たとみられる。世界自然遺産登録海域の近くで、結果的にクジラの生態を楽しむ観光客の前で捕鯨した事態になり、波紋が広がりそうだ。【本間浩昭】
ウオッチング船「エバーグリーン」(19トン)に乗っていたウオッチングガイドの佐藤晴子さん(42)によると、現場は羅臼港(羅臼町)の東約14キロの沖合。午前10時44分ごろ、約3.5キロ先に捕鯨船とクジラの噴気を発見し、近付くと、クジラが銛(もり)を撃ち込まれていた。約20分後、クジラは船首に引き寄せられた。
双方の距離は約100メートル。約20人の観光客は、クジラが捕鯨船に横付けされるまで「かわいそう」などと言いながら様子を見ていた。フランス人夫婦の妻は「ちょっと気分が悪くなった」と話していたという。近くには別の2隻のウオッチング船がいたが、このうち1隻は子供が泣き出したため途中で引き返した。
ツチクジラは体長10メートル強、体重11~13トン。国際捕鯨委員会(IWC)の管轄外のため、資源状況について国際的合意はない。捕鯨は日本独自の管理の下で行われ、全国で年間66頭の捕獲枠が定められている。網走を基地とする捕獲は年間4頭が割り当てられている。
エバーグリーンの長谷川正人船長(46)は「私は見せるのが仕事。彼らは捕るのが仕事。でも、何とかならないものか」と話していた。一方、網走市の捕鯨会社は羅臼町に対し、「観光船が接近し、大変危険だった。危険運航に当たると思われるので、注意してほしい」との要請を出した。」
おかしいと思いませんか? 捕獲されたツチクジラはIWCによって規制されているわけでもない種類ですし、捕鯨船はきちんとした資源管理の枠組みの中でやっている操業です。たしかにホエールウォッチングをしている船にわざわざ近づいて捕鯨したのなら、他所でやれよと言う理屈も通りますけれど、この場合は既に捕鯨が始まっている所にわざわざ近づいて行ったんですよね。それで「気分が悪くなった」とか「なんとかならないものか」と言われても、じゃあ来るなよという話にならないでしょうか? だって年間で4頭しか獲れないうちの1頭にもう銛を打ち込んでるんだから。燃料代だって人件費だって銛だってタダじゃないんですよ。
このニュースを見て色々と思い出しました。知床が世界遺産登録される際にも、羅臼側の人たちは決して良い顔をしなかったという話。観光がメインのウトロに対して羅臼は漁業中心なので、世界自然遺産登録されることで生業に影響が出るのではないかという話になり、話し合いの結果、海岸から3キロ以内は規制というところで手を打つことになった。でも、今回の捕鯨は規制区域の外だったわけですからね。せっかくみんなで決めたルールなんだし、それを守っている漁民を白眼視するようなこの本間という記者の論調はいただけません。
ちなみにウトロでもね。寄り鯨(うっかり海岸に乗り上げた鯨のこと)が来た日には、みんなで出刃包丁持って海岸に走っていくんだそうですよ。もちろん肉切り取って食べちゃう為。海に帰すなんてもったいないことはしないんだって。それで海が真っ赤に染まってると(笑)。もちろん観光客が見ていようが誰も気にしない(爆笑)。
だって、北海道島の先住民であるアイヌは昔から寄り鯨を有り難くいただいて来たんですから。伝統は継承していかないと。
http://www2.starcat.ne.jp/~delphyne/dance-de-baleine-echouee.htm
ホクレアの某クルー(ハワイ人)と捕鯨について話し合った時も、言ってましたよ。「大々的な商業捕鯨には賛成出来ないが、伝統的な捕鯨をするのなら問題無いと思う。アメリカが邪魔してそれも出来ない? アメリカは最悪な国だからね。」って。