「3万年前の航海徹底再現」がかなり残念な結果になりつつある

2600万円をクラウドファンディングで集め、朝日新聞が特集サイトを開設した国立科学博物館の実験プロジェクト、いわゆる「3万年前の航海」。

中心となった海部陽介、後藤明、内田正洋の各氏は2007年のホクレア日本航海では私も同じプロジェクトに関わったというご縁のある方々ですが(私は公式ブログの翻訳を全部ボランティアで一人でやった)、今回はちょっといただけない。
最初のコンセプトは悪くなかったと思うんです。南西諸島から出てくる旧石器時代の居住跡から見て、3万年前に外洋航海をやっていたと考えられる。じゃあどんな手段を使っていたのかを、ヘイエルダールやホクレアがやったように実験航海で検証してみよう。
そのツールとして丸木舟をいきなり除外した後藤さんの考え方は「石斧が出ていないから」と言われれば、一つの選択肢ではある。幸い日本には葦舟で何度も航海実験を成功させた石川仁さんが居て、その技術供与も期待出来た。
問題はこっからです。帆走をやった証拠が無いからと言い出したのは海部さんか後藤さんか詳しくは知りませんが、水を吸えば重くなるし水流抵抗もでかい草船を漕いで行こうということになった。最初は竹のパドルで実験したそうですが、全然推進力が出なかった。
でも、帆走の草船ならヘイエルダールがとっくにラー2世で大西洋横断をやってます。46年前に。だからなんですかね。帆走はあくまでノー。
結局、石斧が無いから丸木舟は無しだったはずが、立派な木製のパドルを使っての航海になった。ここでもうコンセプト壊れてます。
更に縄文土器が出てくるより1万年以上前の草船航海で何で水を運んだかもわからないからと、ペットボトルで水を持って行くことにした。栄養補給でコンデンスミルクまで積んだ。救命胴衣や安全索は最新のものを使うのもアリと思いますが、帆走より遥かにクルーの肉体的な負荷がでかいパドリングでこの技術ドーピングはもはや実験になってない。
そして実際の航海でも、行程の大半を伴走船で引いてショートカット。ハワイでホクレアのスターナビゲーションを学んできた内田さんの娘さんも乗っていたそうですが、夜は危ないからって航行中止じゃあスターナビゲーションの出番もありません。
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このプロジェクト、そもそも何が目的だったんでしたっけ?

とりあえず草船パドリングでは無理(流されたら100%死ぬ)ということが2600万円かけてわかりました、ということでしょうか? いや、それは内田さんや石川さんに聞けば実験するまでもなく「無理だ」って言われたはず。
最初にでかい話をぶち上げて大金を集めちゃった以上、途中で「やっぱこれ、無理だわ」とわかっても、コンセプト壊れても、やるしか無かったのかな。STAP細胞のなんとかさんを思い出しました。
ともかく死人けが人が出なくて良かった。
船作りを手伝ったボランティアの方々と、クルーの方々の努力に心よりの敬意を表します。だが、関わった研究者は恥を知りなさい。
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