ビジュアルでわかる船と海運のはなし

 今日は本の紹介です。たびたびこのウェブログにもコメントをいただいている拓海広志さんの著書です。

 拓海広志『ビジュアルでわかる船と海運のはなし』成山堂書店、2006年

 最近、やれガレオンだのスターボード・タックだのヒーブ・トゥだのと、船がらみの翻訳の仕事が妙に多かったのですが、この本はかなり役に立ちました。

 著者の拓海広志さんは、かのヤップ島の航海カヌー「ムソウマル」建造と石貨運搬プロジェクトでも有名ですが、本名は恵谷洋さんといって、長年国際物流の実務に関わって来られた、言わば国際物流のプロ中のプロという人物です。どれくらいプロかというと、複数の会社間を転職する度に肩書きが長くなっていく系の、つまり仕事の実力が本当にあるプロなんですね。私、名刺をいただいてビビったのですが、

「ディー・エイチ・エル・ジャパン株式会社アジア太平洋地域統括本部
 グローバルカスタマーソリューションズ・グローバル営業本部長」

 ちなみにDHL、グループの航空貨物世界シェア1位、海上貨物世界シェア5位、グループの総従業員数は数十万人という化け物物流会社です。日本法人だけで社員1730人とあります。・・・・の、営業本部長さん。これでわかっていただけたでしょうか。

 さて。この本はというと、伝統的な航海術ではなく現代の船と海運の世界の入門書という体裁になっています。読み物というよりは、調べ物に便利な本ですね。例えば私が翻訳の仕事で「一等航海士って具体的に何をする人なんだろう?」とか、「フィギュアエイト・ノット(紐の結び方の一種)ってどんな結び方なんだろう?」とか、まあ色々と困るわけですよ。言っちゃあ何ですが、私、船のことなんか何にも知らないから。そんなときにおもむろに本棚からこの本を取り出して、索引を引く。すると大概が図解入りで説明されている。もっと深く知りたければこの本を読めという読書案内も註にいっぱい書いてある。しかも文体は嚼んで含めるようなやさしい文体。このウェブログと同じ「です・ます」という語尾が使われているんです。大概こういう本って「だ・である」調なんですけどね。

 すげー便利。頭が下がります。

 と同時にですね。やっぱこういう世界も勉強しとかんといかんなと思いました。考えてみれば現代の航海カヌー乗り特にハワイ方面など、水先案内人とか港湾作業員とかヨット乗りとか、足の一本はこういう現代の海事の世界に突っ込んで生活しておられる方も少なく無いわけでね。

 夏休みの宿題は増えるばかり。