伊豆諸島の発掘で有名な小田静夫さん率いる調査団が、」沖縄で旧石器時代のものではないかと思われる剥片を掘り出したそうです。
発掘地点は港川人の骨が出た所のすぐ近く。
港川人というのは縄文時代より前の時期である旧石器時代の人骨です。
http://www.amy.hi-ho.ne.jp/mizuy/how/minatogawa.htm
http://www.um.u-tokyo.ac.jp/publish_db/1995collection2/tenji_honyurui2_35.html
今回の発見のキモは、これまで骨しか出ていなかった所から石器らしきものが出たという点です。港川人は沖縄本島から出た人骨ですが、石器はまだ出ていなかったようなのですね。ですから石器も見つかったとなれば、石器の様式その他から、港川人が周辺のどの地域と深い関わりがあったかが推測できるかもしれない。そういう事です。
余談ですが、今回の発掘を指揮した小田静夫さんは長く東京都教育委員会の職員として伊豆諸島の考古学的研究に取り組み、その後、東京大学の先生になったという、なかなか異色の経歴をお持ちです。それでですね。小田静夫さんの名前をこのニュースで見て、関東に旧石器時代があったことを確定させた岩宿遺跡の発見者、相澤忠洋さんを少し思い出したのです。
相澤さんはアカデミズムの世界とは無縁の市井の研究者でした。岩宿を発見した後も、学術的業績は噂を聞いて乗り込んできた大学の先生に総取りされて殆ど名前が出なかっただけでなく、考古学の学界からは嫉妬による非道い嫌がらせを受けてしまいました。インチキ、捏造、売名行為などなどの陰口が雨霰と相澤さんに降り注いだのだそうです。
幸い小田さんはその学問的業績が高く評価されて東大の先生になられたのですが(これは論文を書いて発表出来る環境におられた事が大きいと思いますけれども)、日本の考古学は実は相澤さんのような市井の愛好家に支えられていることを忘れてはいけないと思います。港川人の発掘だってやはり市井の愛好家の尽力が無ければあり得なかったわけですから(2つ目のリンク参照)。
中橋孝博さんは『日本人の起源』の中で、日本ほど考古学熱が高い国は無いと書いておられます。それだけ日本人は自分たちのルーツを知りたいという強い欲求があるのだと。その欲求が市井の考古学研究家を支えているのですね。藤村氏の捏造騒ぎはそのマイナスの成果でしたが(個人的には、アカデミズムの権威主義が藤村氏を捏造に走らせたのだと思っていますが)。
ともかく、ポリネシアの人々が航海カヌーを通してルーツを探求していくのと同じように、私たちの国では考古学研究によってルーツを探求する人々がいる。やり方は色々ってことでしょう。
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