昨日はおそらく35年ぶりに,映画館で「ドラえもん」の映画を見るという経験をしました。
ポピュラー文化の中でも明確にブロックバスター領域のメインストリーム作品で,お話の作り方はワンパターンと言えばワンパターンなのですが,細部まで手抜き無しの仕上がり。私がロングテールのカウンターカルチャーばかり消費していた35年間,弛みなく磨き上げられてきたブランドの凄みを感じました。
昔の作品も当時としては,それぞれとても良く出来ていたのですが,現代の技術と潤沢な予算を使って作られた新しい作品の方が,やはり明らかに良いものなのです。
面白いもので,ロングテール領域の作品,例えば最近見たもので言うと「アルスラーン戦記」などは,考証一つ取ってもデタラメ過ぎて(半裸の下着姿の美女が騎乗で戦闘しているなど),ああB級・・・と思ってしまうし,これだったら昔のA級作品のが良いよなとなるのですが。
話を映画ドラえもんに戻しましょう。
このシリーズは,ブランドの育て方を考える上で非常に興味深いケーススタディの素材になると思います。
その特徴は
・何十年も新作を作り続けている
・売上は常にトップクラスであり,それ故,予算も潤沢である
・日本国民ならハッタリ抜きで99%以上が「ドラえもんとは何か」を知っている
・売上は常にトップクラスであり,それ故,予算も潤沢である
・日本国民ならハッタリ抜きで99%以上が「ドラえもんとは何か」を知っている
最初の二つだけなら,ベンツのEクラスやロレックスのクロノグラフなどなど,似たようなブランドは思いつきます。でも三つ目まで考えると,すぐには思いつかない。
そして,三つ目が特に大事なんです。
何故ならば,これに関わる全てのスタッフが「何を作れば良いのか」を最初から完全に理解出来ているからです。「映画ドラえもんとは,どんなものでなければならないのか」「映画ドラえもんのイデア(理想像)とは何か」を,誰もが知っている。
ヴィジョン共有の9割以上が最初から済んでいるわけですね。
その状態から,潤沢な予算を生かして良質なスタッフだけを集めて,その時代に使えるベストな道具立てを動員して,その時代の最高の大長編ドラえもんを作ることが出来る。そうして出来上がったものは,全ての日本国民を納得させるのが最低限の要求レベルになる。
これは,名探偵コナンもクレヨンしんちゃんもポケモンも無理ですよ。全ての日本国民が見るもんじゃないからね。ガンダムもエヴァンゲリオンもマクロスも,この領域には届かない。仮面ライダーも戦隊ものも。
考えれば考えるほど,「映画ドラえもん」は日本最強のブランドなんじゃないかと思えてなりません。こういうものにスタッフとして関われる人は幸せでしょうね。