私は『下流志向』あたりまでの内田樹は正直、かなり嫌いだったのですが、何故内田樹がこれだけ支持されるのかという点には興味があって、彼のブログは定期的にチェック(というか斜め読み)してきました。
その内田樹が最近、繰り返しマスメディアの中にいる人々の思考の根本的な欠陥を指摘して嘆いていますけれども、たしか彼が定期購読している新聞は毎日新聞。とすれば、彼の嘆きは私にもよく理解出来ます。普天間基地問題に関する毎日新聞の論調など、日本の正社員左翼の駄目さが集約されているのではないか。そんな気がし続けています。合意形成を潰すことが組織存続に繋がるという構造的欠陥が日本の左翼にはありますから。
問題なのは、内田も指摘しているように、毎日新聞の中の人たちはこの問題の現在の袋小路状態を引き起こしたのは現首相の個人的な資質であり、現首相が引責辞任することで事態は打開されるというロジックでしか語れていないこと。その善悪二項対立的な考え方のナイーブさもいい加減救いがたいのですが、私がより深刻に考えているのは、毎日新聞の中の連中のおそらく誰一人として、普天間基地移設問題を自分自身の問題、自分自身もその発生と解決に責任を有する問題だという意識を持っていないという点です。
普天間基地移設問題の根源にあるのは、現在既に普天間基地周辺に住む人々が深刻な被害を被っているということと、日本が沖縄県にアメリカ軍基地を過度に集中させてきた、言い換えれば基地負担を沖縄に押しつけてきたということですよね。
そこでまず私が考えるのは、同胞に継続的な苦難を強いてきたことの責任をどう自分は取れば良いのかということなんですが、毎日新聞は違う。全てを現首相に(またしても)押しつけて、自分たちは現首相の苦闘をあざ笑い、はやし立て、「さあどうしてくれる」と書くばかり。
ま、毎日だけじゃないですけど。でも、左系のマスメディアの中では毎日の品性の無さは目に余る気がします。そりゃあ、そう書くことで自分たちの新聞が売れると思うのなら、そう書くしかないですよね。「普天間基地の移設先に手を挙げる土地が一つとしてないということは、我々自身が赤面すべき問題だ。」と書かずにね。
国外移転? グアムに持って行け? グアムの人々の迷惑とか考えてるんですかね? この問題を丸く収める唯一の解決策はアメリカ大統領が「わかった。じゃあ普天間にいる海兵隊はアメリカ本土かハワイに撤収するよ」ということですが、もうアメリカは完全に現首相の足下見てますから。アメリカが強気に出れば出るほど日本のマスコミが喜ぶことは100%了解済み。折れるわけがありません。
私自身はどうかって? 取り敢えず現政権に問題解決を託して、自分では何もしていないわけですから、出口無しの難問に四苦八苦している担当者をあざ笑い、罵倒して楽しむという発想はございませんよ。まずは彼らを信じて見守るしかないし、彼らが上手に解決出来なかったら、それは彼らに託した自分自身の責任でしょうね。
いや普通に考えて、部下に仕事を任せて部下が失敗した時、全責任を部下に押しつける上司って最悪でしょ。「失敗した時の責任は俺もとるから、全力でやれ」と言わないと。