もともとマスコミの粗雑さに耐えきれなくて2回ほど関連記事を書いた、大相撲における大麻疑惑ですが、一応シメの記事を書いておきます。
精密検査で陽性となった二人の力士の件は残念な話です。結局マスコミだけが得をしたような気もします。最初に大麻問題で解雇された力士は起訴猶予で国外退去となるようですし、続く二人も解雇ですから同じ道をたどるのでしょう。
水に落ちた犬を叩くのが大好きな方々には一服の清涼剤となったのかもしれませんが、私はこの処分は重すぎると思います。かつてチェルシーFC時代にコカイン陽性となってクラブをクビになったルーマニアのストライカー、アドリアン・ムトゥは出場禁止処分7ヶ月と罰金2万ポンド(450万円くらい)を科されましたが、その後にユベントスと契約。更に我がフィオレンティーナにやってきて完全復活。今や押しも押されもせぬ大エースです。
マンチェスター・ユナイテッドのリオ・ファーディナンドも2004年にドーピング検査をすっぽかした件で8ヶ月の出場停止と5万ポンド(1100万円くらい・・・彼の一週間の給料ですが)の罰金。その後はクラブの大黒柱として現在も世界最強クラブのディフェンスリーダーです。
2006年ジロ・デ・イタリアの総合優勝者イヴァン・バッソ。彼はオペラシオン・プエルトと呼ばれる大規模な血液ドーピング疑獄に連座した件で1年9ヶ月の出場停止処分となりましたが、既に名門リクイガスとの契約を交わして、出場停止処分が明けるのを今か今かと待っています。
彼らは確かにルール違反をしたわけですが、然るべき罰を受けた後は、また競技に戻っているし、競技に戻ることが出来る体制になっているのです。今回問題となった3人の力士も、出場停止半年、罰金500万円、番付けは序の口降格くらいで良かったんじゃないかと思います。どうも最近の日本には、一度ルール違反を犯した人間は何時でも、何時まででも、果てしなく叩いて良いというような風潮があるような気がしてなりません。品の無いことです。
小説「エデンの東」の最も有名な一節にこういうものがあります。
"Don't you see?" he cried. "The American Standard translation orders men to triumph over sin, and you can call sin ignorance. The King James translation makes a promise in 'Thou shalt,' meaning that men will surely triumph over sin. But the Hebrew word, the word timshel — 'Thou mayest' — that gives a choice. It might be the most important word in the world. That says the way is open. That throws it right back on a man. For if 'Thou mayest' — it is also true that 'Thou mayest not.' Don't you see?"
「『わかりませんか?』彼は呻いた。『アメリカ標準訳聖書は、人に対し、罪を征服せよと教えています。罪とはすなわち無知のことだと言うのです。これに対し、欽定訳聖書では、同じところをThou shaltと訳しています。これは人に対する神の約束です。人は必ずや罪に打ち勝つだろうと言っているのです。ですが元々のヘブライ語、ティムショールという単語なのですが、これは実はThou mayestという意味なのです。つまり選択肢を与えるということです。多分これは、この世で一番大事な言葉なのではないかと私は思うのです。道は開かれていると神は言っているのです。選ぶのは人間自身なのだと。ですから、Thou mayest(汝は罪を治められるかもしれない)というのは、同時にThou mayest not(汝は罪を治められないのかもしれない)という意味でもあります。わかりますか?』
3人の元力士の方々は、罪を治めることが出来るかもしれないし、そうでないかもしれない。それは彼ら次第だけれど、道は開かれているべきではないか。と私は思います。また相撲がやりたいというのなら、その道は開けておくのが有徳の士の行いというもの。散々興業に利用しておいて、何かあったらお払い箱ってのは、おじさん感心しないな。
まあでもね。敢えて言うならば、日本相撲協会なんかに拘らなくて良いんじゃないのかな。幸か不幸か肉体的には現役バリバリの一流アスリートが3人、放り出されたわけです。3人居れば相撲は出来る。あなたたちの故郷に、あるいはそれ以外の日本ではないどこかに、日本の相撲の良いところだけを伝えてみてはどうだろうか。あの排他的な体質はもちろん反面教師にしてくれて結構ですから。
負けるな、3人組よ。多分、この国はもう道を開かないだろうけれど、世界のどこかには必ず道が開かれているぞ。