里山民家の谷戸

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 ロードレーサーは次のフレーム到着まで乗れませんが(現在成田で税関を通過中)、周防大島でホクレアと追いかけっこして圧勝したシクロクロスバイクは元気に動いています。ティアグラとLXとアルテグラとSRAMとテクトロが入り混じった奇怪な仕様ですが、なあに、昨日今日ロードレーサーに乗り始めたおじさまおばさまたちを尾根幹線の上り坂でブチ抜く程度の嫌がらせには充分使えます。

 ここ数ヶ月は奥多摩とか相模川方面ばかり走っていたので、日曜日は久しぶりに狭山丘陵を目指しました。この方面はシグナルストップが多いので大した運動にはならんのですが、土曜にため込んだ乳酸抜きには丁度良い感じです。

 残堀川沿いをのんびりと西北に進みます。武蔵村山の巨大イオンモールを少し過ぎたところで青梅街道にぶつかり、何となく青梅街道を越えて野山北・六道山公園へと向かいます。この公園、面積132.4ヘクタールという超弩級の里山を丸ごと保全して都立公園にしているという、何とも凄まじいものです。南山全部と同じくらいありますかね。多摩丘陵屈指の里山である小山田緑地と小山内裏公園を足して1.5がけしたくらいの面積ですよ? 単純にうらやましいです。新銀行東京に突っ込んだ1000億があれば南山東部と言わず、全部買ってこれと同じ規模の都立公園作れたんだけどなあ・・・・。

 禅昌寺にお参りして須賀神社の方に向かうと、何やら奇妙な看板が見えます。

「里山民家→」

 は? 何すかそれ? 里山も民家もありふれた単語ですが、それを連続で書かれると話は違ってきます。里山というのは人里つまり民家がある空間に隣接している山林のことですから、里山の中に民家があるというのは、饅頭の餡の中に饅頭皮が入っている状態を想起させる、あるいはズボンの上にブリーフをはいている状態を連想させる(しねーよ)、つまりは「通常あり得ない状況」です。

 何だこれは?

 思わずハンドルをそちらに切って・・・いや、自転車の場合は体重をそちらに移動させるとハンドルがそれに連れて傾くというのが正しいんですが・・・ともかくそっちに向かいました。

 須賀神社の社殿の脇をするすると走り抜けると、なかなかに広大な谷戸が眼前に広がります。稲城で言えば駒沢女子大の東側にある谷戸と同等でしょうか。そして谷戸の中央にはよく手入れされた古民家。周囲にははざかけされた稲。何とも長閑な風景です。

 駐輪場に自転車を置いて古民家に近寄ってみます。何でもここはかつて産廃の不法投棄で谷戸全体が埋まっていたらしいのですが、ダンプ9000台走らせてそれを除去し(どこに行ったんだそれは)、昔ながらの谷戸田を再現したんだとか。古民家はビジターセンター用に移築してきたそうです。管理運営はボランティア団体が担っており、古民家の裏手にはイベント用の炊事場兼トイレもありました。似たような体制で運営されている里山公園に八王子の長池公園もありますが、掲示板には長池公園の管理団体であるFUSION長池公園との意見交換会をやりましたなんて報告も見えます。

 ふーむ。なかなか良い活動をしているじゃないですか。これを里山と呼んでしまうのは、最近の「何でもかんでも里山印つけとけば取り敢えずみんな納得すんだろ」的風潮の弊害かと思いますが(これは谷戸田でしょうどう見ても。谷戸は谷戸で多摩・武蔵野の大切な空間ですよ)、公園の仕立て方としてはかなり良い。横沢入の保全緑地もなかなか良い谷戸空間ですが、こちらはもうちょっと農地寄りに作ってあって、これはこれでとてもよろしいと思います。

 稲城でも奥畑谷戸公園のデザインや管理体制は早晩、きちんとした議論が必要になってくると思いますし、私からも開発調整課の職員さんに議論の場の設定を提案しているところですが、ここは大いに参考になると感じました。ただ、この「里山民家」は南向きの谷戸田で水流も豊富。一方、奥畑谷戸は多摩川低地からの比高が50メートル以上はある多摩丘陵の北側尾根付近のじめじめした二次林の中。全然条件が違う。どうしたら人間が歩いて楽しく、それでいて豊かな生態系も成立する場所に出来るのか? もっともっとフィールドリサーチの範囲を広げて参考例を増やしていかなければいけません。