韓国代表と愛国心

 昨日のゼミは面白かったですよ。

 テキストはテッサ・モーリス・スズキの『愛国心を考える』(岩波書店、2007年)。私が学生番号だけ見て機械的に割り振ったレジュメ発表担当者は韓国からいらした、かなり優秀な留学生でした(前期に教えた上海からの留学生もとても熱心かつ優秀な学生でしたし、こういう若者たちが立教大に学びに来てくれているのは嬉しいことです)。

 韓国の学生が、イングランド出身で日本人と結婚してオーストラリアに住む社会学者の書いた、日本における「愛国心」についての日本語テキストを読んで、問題提起を行う。何てグローバルなんでしょう。

 どんな議論が展開されるか楽しみにしていたのですが、期待に違わぬというか期待以上の面白さでした。取り敢えず昨日わかったこと。

・大学に入るまでに学校で「国を愛しなさい」と教えられた記憶がある日本人学生は一人も居なかった!

・「例えば君が海外旅行に行って、現地の人に『おまえは愛国者か?』と尋ねられたらどうする?」と質問したところ、質問された学生は少し考えてから「愛国者だって言います。日本好きですから。」と答えました。それで良いんだよ。先生だって愛国者だ。

・サッカーや野球の日韓戦は、やはり他のカードよりも断然萌えるらしいです。「燃える」の方かもしれませんが。ただしサッカーに限ると最近は「オーストラリア戦も燃える」という声がありました。やるたんびにティム・ケイヒルに煮え湯を飲まされてますからねえ(笑) ちなみに私、ティム・ケイヒルは大好きです。

・じゃあ「日本嫌いなの?」「韓国嫌いなの?」と聞いてみると、そういうわけではなく、親しみを感じているからこそ対抗戦では燃えてしまうということのようでした。早慶戦や早明戦のようなものでしょうか。ちなみに私はパク・チソンがマンチェスター・ユナイテッドの試合でゴールを決めると、ちょっと嬉しいです(一番嬉しいのはオシェイのゴール)。

・きっとみんな、韓国代表(あるいは日本代表)が居なかったら寂しくなると思います。あ、キム・ユナちゃんもね。宿命のライバル関係は萌えるもんね。

 テキストで論じられていたここ10年間の日本社会の国粋主義傾向は、実はスズキさんが心配しているほど日本社会に根を広げているわけではないようです。皆おおらかで、善良な若者たちですよ。

 講義の最後にはハワイ先住民の運動を紹介して、「自分の住んでいる土地に伝わるものの中で、世界のどこに持って行っても喜ばれるものをどんどん広めていくという愛国心もあるんだよ」とまとめておきました。