これは日本と韓国の戦いではない

 フィギュアスケートは各国の国内選手権、欧州選手権、四大陸選手権も終わり、いよいよ4年に1度のボーナスステージであるオリンピックとなります。フィギュアスケートは私にとっては観戦に際して最も集中を要するスポーツなので、この2年はきちんと見ることが出来なかったのですが(息子が暴れているので)、何とかグランプリファイナル以降の主要な演技はチェックして、オリンピックの予習をしています。

 男子シングルは、まさかの復活を果たしたプルシェンコの調子が抜群ですね。プルシェンコに勝負を挑めるだけの実力を持っているのはランビエール、ジュベール、高橋、ライザチェクの4人ですが、病み上がりのジュベールも故障明けのランビエールと高橋も安定感を欠きますし、ライザチェクはムラが大きい選手。プルシェンコの連覇は濃厚でしょう。

予想

◎プルシェンコ-この人は地球人じゃないですから。
○ジュベール-漢の四回転が全部決まれば金も夢ではない。
△ライザチェク-金はまず無理でしょうが、世界王者の意地に期待。

 女子シングル。金、浅田、安藤の3人の実力が飛び抜けてますね。いくらホームアドバンテージがあってもロシェがメダルに絡むのは難しいでしょう。若手2枚を出してきたアメリカも6位以内にどちらかが入れれば御の字。欧州勢ではコストナーがメダルに絡めるかどうかというところで、マイヤー、レピスト、コルピあたりもよほどの番狂わせが無ければ東アジア勢を抜くのは無理でしょうね。ソルトレイクでの、ヤグディンとプルシェンコの激突を思い出させる、二人の天才の対決です。こんな勝負が見られることに感謝しましょう。

◎金-安定感抜群。プログラムもよく練ってあるし、今が全盛期か。
○安藤-経験とメンタルの強さは大舞台で有利。金と浅田がミスで自滅すれば優勝はこの人。
△浅田-3Aの調子次第。絶好調なら優勝はこの人でしょう。

 ペア。オリンピック以外のあらゆる栄光を手にした申雪・趙宏博夫婦が帰ってきました。トリノの直前が全盛期かと思っていましたが、今季の彼らはあの伝説の世界選手権「トゥーランドット」を彷彿とさせる好演を連発。得点も出ているので、優勝最右翼候補でしょう。個人的にも一番思い入れがあるチームだし。いずれにせよソ連~ロシアの連覇は終わるはず。

◎申雪・趙宏博-技術、表現力、経験、メンタルとも最強。よほど荒れない限りは最後の宿題をクリアするはず。
○サフチェンコ・ソルコビー-欧州選手権では川口・スミルノフ組に遅れをとったが、安定感では世界王者組が一枚も二枚も上。
△?輾清・?稲 健-?輾清の病気もあってここ数年は精彩を欠いたが、本来の実力は現世界王者組を上回る。

 アイスダンス。4年前にはソ連~ロシアの栄光もこれで終わりかと思いましたが、ドムニナ・シャバリン組の急成長には心底びびりました。一方、この4年間で成長が見られなかったのがベルビン・アゴスト組。いつの間にかデーヴィス・ホワイト組の後塵を拝してます。とはいえ、メダル争いはこの3組で決まりでしょう。

◎デーヴィス・ホワイト-ベルビン・アゴスト組の売り出しが派手過ぎた為に目立ちませんでしたが、もともと表現力も技術も若手とは思えなかったチーム。これから数年が全盛期でしょう。
○ドムニナ・シャバリン-GPシリーズには間に合わなかったものの、欧州選手権をきっちり勝って世界王者健在をアピール。実力ではデーヴィス・ホワイトより上位か。
△ベルビン・アゴスト-技術面では4年前に既に完成の域にあったが、芸人魂が明らかに不足。

 誰が勝つにしても、ライバルがミスで自滅したとかではない、最高の演技の応酬による勝負を見たいですよね。それともう一つ。日本では女子シングルの金選手と浅田選手の戦いに必要以上に注目が集まりそうですが、憶えておいてください。これは日本と韓国の戦いじゃないってことを。フィギュアスケートの世界はグローバリゼーションが進んでいます。金選手も浅田選手も現在のコーチは外国人。安藤選手もそうですね。オリンピックに出てくるフィギュアスケート選手の多くが故郷を離れてアメリカやロシアでトレーニングをしています。

 金選手の勝利は韓国の勝利ではありません。浅田選手の勝利は日本の勝利ではありません。まずは金選手や浅田選手を支える、国境を越えて集まったスタッフの方々の勝利であり、そしてフィギュアスケート競技を愛する全てのファンの勝利でもある。

 皆で祝おうじゃありませんか。フィギュアスケート競技がかくも奇跡的な高みに達したということを。