結城幸司さんの講義

 先日、立教大の阿部珠理先生の学部ゼミに結城幸司さんがいらしたので、私が担当している学生の中の希望者(かつその時間に用事が無い者)を連れて聴きに行ってきました。阿部先生のゼミでも私のゼミでも同じ、結城さんの講演録「アイヌ文化の今から未来へ」(検索するとpdfが落とせます)をテキストに使ったんですよ。

 阿部先生は博士課程時代にとてもお世話になった先生で、北米の先住民がご専門なのですが、学部ゼミでは以前からアイヌをテーマに講義をされています。先住民族サミットにもゼミ生を全員連れて参加されたとのこと。

 さて、結城さんのお話は今回もバラエティ豊かで、オフレコの部分もあったのですが(一番面白かったのはオフレコ部分だったり)、いざお話が終わって阿部先生が学生たちに質問を募ると、やはり皆さん真面目ですから一瞬、真面目に考え込んじゃうんですね。その隙をついて航海カヌーマニアが質問。

「結城さん、アイヌの航海カヌーを造ってサハリンに行く計画はどうなったんですか?」
「いや、そのうちやりたいなとは思っているんですけど、逆に自分たちでやるものだと、いつでもやれるって感じで、なかなか手をつけなくなっちゃうんで。でも、知床で造ってるカヌーで・・・」
「レプンカムイですか? あれは少し小さくないですか?」
「小さいです。だからまあ、あれをシンボルみたいにして。」
「サハリンに行く時はセイリング? パドリング?」
「セイリングで考えてます。・・・って、加藤さん何でそんな詳しいとこまで訊くんですか(笑)」
「マニアですから(笑) 今、アイヌの伝統的な航海術は保存されてるんですか?」
「こうであっただろうと推測して復元していくしかないですよね。アイヌは常に島影を見ながら航海したから、絶対に迷わなかったって話も伝わってるし、昔釧路に、目が見えないんだけどみんな航海に出る前に必ず相談に行ったっていう人も居たそうなんです。」
「横浜で(ポマイさんが)ハワイに(航海術を)勉強に来なさいよって(結城さんを)誘ってましたけど、そういう、他の土地の航海術を学んで取り入れるってのはありですか?」
「(ハワイアンたちが)マウに学んでやったのもそうだし、僕たちも未来に向けて、よそのものも取り入れて今のアイヌの航海術を作っていくってのは、ありだと思ってますよ。でもね、大自然に対した時に人間が考えることって、あまり変わらないと思うんです。星を見ながら航海するとか。僕の好きなケルト文様とアイヌの文様もすごく似てるしね。」

 学生たちは呆然としていましたが、これで気分がほぐれたのか、私の質問の後には活発に意見や質問が出て、とても盛り上がった講義でした。