大相撲の力士を対象とした抜き打ちの薬物検査で、2人の力士に陽性反応が出たとかで、世間は大騒ぎです。全く情けない話です。力士がではありません。マスコミが、です。
真っ先に私が思い出したのは、ロードレース界で数年前から猛威を振るっているドーピング・スキャンダルですね。イヴァン・バッソ、ヤン・ウルリッヒ、フロイド・ランディス、ミカエル・ラスムッセンなど超ビッグネームが次々にドーピング疑惑をかけられて、結論が出る前にメディアによって血祭りにあげられました。ランディスの親族の中には自殺した人まで出たとか。
特に私が問題視するのは、検査結果が確定しないうちからマスコミに情報がリークされたり、発表が行われたりして、選手や力士が三流マスコミの格好のエサ場にされてしまう状況。中には、B検体のチェックでドーピング疑惑が晴らされた選手もいるわけですからね。今回の力士たちにしても、検査結果が確定しない限りはマスコミにエサを与えてやる必要など無かったと思います。
一方、今日のBBCには興味深いニュースが出ていました。イングランドのサッカーリーグ、2部のサウサンプトンに所属するブラッドリー・ライト・フィリップス選手が窃盗容疑で3月に逮捕されており、このほど公判が開かれたとの記事。ブラッドリー・ライト・フィリップス自身はさほど目立った成績を残していませんが、父親のイアン・ライトは超一流の選手でしたし、義兄のショーン・ライト・フィリップスはやはり今が旬のワールドクラスのウィンガー。まあ、日本で言えば長島一茂氏のようなものでしょうか。本人の成績はあれですけども、親族が超一流の選手という。
私が感心したのは、3月に逮捕されていたにも関わらず、マスコミが採り上げたのは公判が始まってからというところと、ちゃんとブラッドリー・ライト・フィリップス選手のことを「ミスター・ライト・フィリップス」と書いているところ。つまり、単に逮捕されたというだけで騒ぐのではなく(誤認逮捕や冤罪の可能性だってありますから)、公判が始まるまでは敢えて記事にせず、また公判が始まってからも判決が確定するまでは無罪推定をするという原則に則って、きちんと敬称をつけて呼ぶわけです。
一言で言えば、軽挙妄動をしないということ。総理大臣の辞任表明以降の騒ぎと併せて、改めて日本のマスコミのレベルの凄まじい低さを痛感した9月でした。