学食じゃないんだから

 先住民族サミットが終わって1週間以上経ちました。この間、インターネット上で先住民族サミットがどう評価されているかを眺めていたのですが、私にとっては失望すべき状況と言えます。

 反応は大きく分けて二種類しかありません。

 一つはネット右翼の方々が脊髄反射で先住民族サミットによる提言を罵倒しているもの。これはアイヌ語公用語化論とか日本政府による謝罪といったピンポイントのフレーズに反応して、非常に貧しいボキャブラリーで一言か二言、呪詛の言葉を吐き捨てているものですね。どうもこの方々の言説は8ビットのパソコンで作れる人工無能と大差無いんじゃないかという気がしてなりません。つまりファミコンゲームに出てくる登場人物の会話プログラム程度の奥行きしか無いということなんですが。

 もう一つは、先住民族サミット全面肯定論ですね。とにかく先住民族サミットは良かった、でもG8や日本政府はアホだという。こちらも紋切り型という点では前述の類型と同じくらいにつまらない言説です。8ビット人工無能で簡単に生成出来る意見ばかりです。

 つまり、先住民族サミットについてはほぼ全否定か全肯定の二者択一の受容になっているということです。

 これはいかがなものか。高校の学食だってA定食とB定食以外にも麺類とか丼モノとか色々ありましたし、金沢大の学食は基本的にアラカルトメニューでした。あれかこれか、全面的に受け入れるか全面的に排除するかなんて思考は、学食のメニューよりも深みが無い。そう思います。これはネット上だけの現象ではなく、一昨日、結城さんと少し電話で話したのですが、運営側に直接伝わってくる反応に関しても、内容について細かく論じているのは私の送った感想くらいだったと。

 ただ、こういった傾向は先住民族サミットに限らないと思うんですよ。例えば環境問題に関心があるんだったらマイバッグ持参で反原発と反六カ所と反グローバリズムはセットメニュー。当店では単品でのご注文はご遠慮いただいております。

 椎名誠という作家の昔の作品に、こういうシーンがありました。会社のみんなで定食屋に昼飯を食いに行った。そうしたら何故か全員で同じものを注文しなければいけない雰囲気になった。別のものを注文したかった椎名が躊躇っていたら、周囲が「君もこれで良いんだよな?」と、質問の形式で圧力をかけてきた。ムッとした椎名は、「いいやいいや、メシ要らない」と言って店を出てしまった。

 きっと皆さんも、似たようなシチュエーションは経験されていると思います。阿吽の呼吸のさりげない強要。でも、私、思うのです。こういう集団って、仲が良いようで実は風向きが変わったら呆気なく瓦解するんじゃないのかなと。空気感優先でやっている限り、盤石の信頼関係は築けないんじゃないかなあとか。

 先住民族サミットの提言、皆さんもじっくりと先住民族問題やアイヌの歴史、アイヌの現在について勉強して、自分なりの評価をしてください。学食で昼飯選ぶのとはわけが違う、私たち日本国民にとっては極めて重要な問題なのですから。