卒論口頭試問の日

これやるの好きとか、楽しいというのは、クリエイションを始めたり続けたりする上で一番大事で、それが無ければ大概は始まらないんだと思います。

が、そうやって始めたクリエイションを完成させたり、完成したものを検証して次に生かすというプロセスでは、自分以外の誰かとの関わりの有無や質や量が重要になります(これを社会関係と呼ぶと、グッと社会学っぽくなります)。

そして、思うに後者の段階における動機が「やらないとペナルティがある」とか「俺のすごさを認めさせる」くらいだと、誰かを唸らせるようなものが出来る打率は低いのです。最大限甘く見積もって1割弱くらいでしょうかね。

そういう、自分自身に意識が向かうのとは逆に、特定の誰かのため、でも良いですし、特定の社会集団のため、でも良いですが、強制されたでもないのに自分以外の者に裨益するものを生み出す、という形でクリエイションのスイッチが入った時が、大概の人間は最もベストパフォーマンスを出しやすいのです。何故ならば、6割の完成度なら見よう見まねの模倣で到達出来ますし、8合目までは正しい手順や合理的な思考によって上ることが出来ますけども、その先の頂上アタックは運とか粘りとか情熱といった、計量も計算も出来ない何かが発動しなければ進まない、つまり「ここから先は理屈じゃ無いゾーン」だからです。

そんな得体の知れないゾーンを踏破しようという時、自分の為というのなら、自分が満足したらそこで止めちゃえるわけです。しかし、誰かの為ということになると、もうこっから先には進めないというとこに行くまでは、なかなか止められません。だからベストパフォーマンスが出やすい。

いわゆるアーティスト志望の人間が苦しむのは、アート制作という作業がなかなか2番目のモードでは起動しないからでしょう。卒論を書くことの難しさの多くもここに帰着すると思います。「クリエイティブな職種」を目指して就活する学生も、かな。

さて、今日は元かとうゼミの4年生たちの卒論面接だそうです。今回のクリエイションが自分にとってどんなものだったか、面接の前でも後でも良いので、じっくりと考える時間を30分ほど持つと良いですよ。その30分から得られる学びは小さくないはずです。