フィールド演習でなにするの?

 学生から質問メールが来たので、その回答を。

1:マイノリティって何?

 マイノリティ(少数民族・少数者)というのは、相対的な概念です。例えば韓国人留学生は日本では「韓国人」というマイノリティですが、韓国に戻れば多数派すなわちマジョリティです。

 私は日本ではマジョリティですが、韓国に住めばマイノリティになります。

 同じ日本人でも、各種の障害者はマイノリティです。でも、特に障害がない私が、例えば目の見えない人たちのパーティーに出席したら、私がマイノリティになります。

 単純に言えば、ある集団の中で、何となく肩身が狭い人たちということになります。

2:フィールド演習で何をするの?

 簡単に言うと、以下のような流れです。

前期→マイノリティについての本をみんなで読んで、マイノリティ研究やマイノリティ問題の世界の雰囲気を何となく掴む。雰囲気が掴めたら、ゼミ生を4グループくらいに分けて、夏休みにマイノリティに会いに行くとしたら、どこに行くと面白いかを調べてもらう。
夏休み→前期にみんなで相談したマイノリティのコミュニティに行って、そこで合宿しながら交流を深める
 どこに行くかは学生の話し合いで決まるので、私にもわかりません。もしかしたら北海道に行くのかもしれないし、川崎の在日韓国人社会の調査になるかもしれないし、新大久保の韓国人街でもオッケーです。学生の皆さんの興味関心と経済力を睨み合わせて決めることになりそうです。もちろん、その気があれば東南アジアの漂海民(サマ/バジャウ)とか、ハワイ先住民とか、アオテアロア(ニュージーランド)のマオリとかの調査に行くのでも構いません。
後期→夏休みに仲良くなったマイノリティの人たちと一緒に、何か面白いことをします。ケータイのストラップを一緒にデザインして売るとか、そのマイノリティの伝統デザインをモチーフにしたTシャツを作ってユニクロに売り込みに行くとか。そのマイノリティの料理をアレンジして立教の学食に新メニューとして売り込むのでも良いし、そのマイノリティの人たちと一緒にバンドを作ってライブをやるとか、一緒に写真展をやるとか、一緒にインスタレーション・アートを作るとか。もう何でも良いです。みんなで話し合って、一番面白そうなことをやりましょう。

 来年のフィールド演習で最終的に何をするのか、何ができるのかはまだ私にもよくわかりません。でも、皆さんの力が一つにまとまれば、きっと死ぬほど面白い1年に出来ると思います。

3:何で「勉強して調査して報告して終了」じゃないの?

 これは私の個人的な意見ですが、マイノリティ研究はともすると「通りすがり野郎の無責任な正論」になりがちなのです。マイノリティの調査をすれば何かしら社会問題は出てきますが、それを「こんな困った問題があります。」と報告して終わりだったり、「こんな非道をしているマジョリティはいますぐ悔い改めるべきだ」と怒ってみたりしても、何の解決にもなりません。調査させていただくマイノリティの方々にとっても、殆どメリットになりません。
 
 私がこれまでのよくあるマイノリティ研究に感じる問題点は以下の通りです。

・基本的に他人事。
・ソリューションを提示しない。

 自分はいつでも撤収して終わりに出来る場所で、いくらありがちな正論を吐いてみたところで、誰もまともに取り合ってくれませんよね。だから、まずは他人事で終わらないように、自分も当事者の一員になる。でも、私たちはそのコミュニティのメンバーではないので、何か別のやり方を考えなければなりません。そこで私が思いついたのが「一緒に仕事をする」というアプローチです。ビジネスの基本は「三方よし」。自分と取引先、そして社会全体という三つの場所にメリットを発生させなければ良いビジネスは出来ません。私たちは、取引先であるマイノリティの人たちと運命共同体になるのです。

 そして、何か調べたり書いたりしているだけではなくて、実際に何かのサービスや商品を創造していくことは、その創造行為によって社会問題の解決を目指すということに必然的に繋がります。「言い逃げ」ではなく、自らソリューション(解決策)の創出に取り組むことで、これまでのマイノリティ研究が陥りがちだった袋小路を突破出来るのではないかと考えています。

かとう