懐かしい文書が出て来た。一昨年の2年ゼミの10月分読書課題の指示文書。今の4年生がやった課題っすね。去年もほぼこれと同じ課題だったけど、今年はがらっと変えます。これよりもうちょっときつくする予定。
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専門演習「写真と社会」10月の読書課題
テキスト
A: ヴァルター・ベンヤミン「複製技術時代の芸術作品」多木浩二『ベンヤミン「複製技術時代の芸術作品」精読』岩波現代文庫、2000年、135-188ページ
or
Walter Benjamin (1936), “The Work of Art in the Age of Mechanical Reproduction”
B: 光田由里「8章:写真のありか──細江英公 オリジナル・プリントとミニグラフ 」『写真、「芸術」との界面に:写真史1910年代-70年代』青弓社、2006年
課題
上記のテキスト2編(Aについては自分の読みやすい言語訳を使用して良い。ドイツ語の原文や英語訳はインターネット上に公開されている)を通読した上で、以下の要求を満たすレポートを作成すること。議論の順序は自由であるが、一般的な論文の書き方であれば下に示す順が自然である。
1) ベンヤミンは、近代的な複製技術の出現によって芸術作品のありかたがどのように変化すると考えていたのかを、簡潔に要約せよ。
2) 写真作品の流通や鑑賞において、オリジナルプリントはどのような意味を持っていると光田は考えているのかを、簡潔に要約せよ。
3) 現在のところ、ある写真作品の原版がネガフィルムであるかデジタルデータであるかで、当該作品のプリントの市場価格は大きく異なっている(ネガフィルムからのプリント作成には職人的な手作業の部分が非常に大きく、デジタルデータからのプリントに比して仕上がりのバラつきが顕著であるという事情がある)が、そうした状況を自分自身は妥当なものと思うか思わないかを、テキスト2編のそれぞれの主張に必ず言及した上で、論じよ。
4) 近年、FlickrやWikimedia Commonsなど写真デジタルデータの共有サイトは爆発的に普及しており、極めて質の高い作品もオリジナルデータが大量に公開されている。こうした状況下で、ネガフィルムやオリジナルプリントの価値(貨幣価値および芸術的価値)の評価は、今後どのように変化していくと考えるか。自分の予想を論理的に説明せよ。
分量
日本語4000字以上 ENGLISH 1600 words or above
締め切り
10月29日22時
その他
・テキストBは図書館本館書庫にあります。コピーカードを渡しておくので、必要に応じて当該部分をコピーして使って頂戴。
・ベンヤミンの論文はマルクスの「上部構造superstructure」「下部構造basestructure」という概念を使って話を始めていますが、簡単に言えば「下部構造」というのは、ある社会がモノ(くいものとかのりものとか)を生産する仕組みのことで、「上部構造」というのは法律とか文化とか宗教とかの、社会の構成要素の中でもモノづくりには直接関わらない部分のことです。ま、冒頭の節に大事なことは書かれていないので、適当に流して可。
・テキストを読んだけども、どうしてもここの部分の意味がわからんという人は、演習が終わったくらいのタイミングで私を捕まえて質問してください。テキストAはちょっと難しい論文なんで、締め切り4日前にテキスト読み始めて締め切り日の夕方にパソコン教室で書き上げるとかやってるとアタマ抱えるハメにはるよ。