Self Esteem

 「学校も危ないけどね」を書いてからすぐに、中山文科相が「ゆとり」路線の全面的見直しを中教審に指示したというニュースが流れました。
http://newsflash.nifty.com/news/tk/tk__kyodo_20050215tk006.htm

 公教育のデザインは常に手直しされていくべきものですから、もちろん次の指導要領が現状を踏まえたものになるのは当然ですが、授業時数の単純増という(おそらく大した効果を生まない)施策で終わるのか、より建設的で現実を直視したものになるのか、注目していきたいですね。
 現在の「ゆとり」施策の問題点の大きな一つとして、景気動向を読み違えたというものがあります。学校を週休2日にする頃には社会全体の労働時間短縮も進み、地域や親が週末は子供を育てる(つまり教科学習以外の学びが行われる)という青写真がありました。ところがバブル経済破綻の影響はすさまじく大きく、労働者におけるサービス残業の大幅増によって人件費を圧縮するという裏技を使わざるを得ませんでした。この結果、地域コミュニティにも家庭にも子供達を育てる準備が出来ていないまま、学校の週休2日制が始まったのでした。
 今、実際に子供達を教えている先生達が悩んでいるのは、子供達の社会性や学習意欲の衰退です。教室で先生の言うことを聞いて50分間勉強するという事が出来ない子供が増えているのです。これは社会全体の変化によるものです。
 さて、極端な例えですが、ふた昔前の子供が50分間のうち45分間は勉強に集中していたのが、今は40分間とか30分間になっているとしましょう。1時数あたり15分も学習の実時間が減ったとすると、年間で授業時数が2/3になったのと変わりませんね。問題はここにあります。これで例えば授業時数だけ単純に増やしても、効率そのものが大きく低下していますから、効果は薄いのです。むしろ子供達の学習効率を上げる施策を考えた方が良い。効率が上がれば、時数は同じでも実時間は一気に上昇します。
 そして、そのような社会性や意欲を育てていくのには、教科学習よりも総合的学習の方が有効であり、また地域社会と濃密に交わる事が有効だと思うのです。
 ベン・フィニーは「Sailing in the wake of ancestors」の中で、航海カヌー文化復興運動がポリネシア人のSelf Esteemを呼び起こしたと書いています。Self Esteemとは一般に自尊心と訳されますが、自分自身の価値を肯定することです。また私はある障害問題に取り組む社会活動家からも、同じくSelf Esteemの大切さを聞きました。障害者はSelf Esteemを獲得することで良い方向へと向かっていく。
 日本の子供達にSelf Esteemを植え付けていく方法、みなさんも考えてみて下さい。